最初に結論:ふるさと納税(寄附金控除)は年末調整では手続きできません。
手続きルートは①ワンストップ特例か②確定申告のいずれか。初年度の住宅ローン控除や医療費控除などで確定申告をする年はワンストップが無効になり、寄附分もまとめて確定申告で申請します。
年末調整×ふるさと納税:何が違う?
年末調整は給与所得の税額を会社が精算する仕組みで、寄附金控除(ふるさと納税)は扱いません。寄附の税優遇を受けるには、
- ワンストップ特例:寄附先の自治体に申請書を送り、確定申告をしない人向けの簡易制度。
- 確定申告:寄附受領書(寄附金証明書や明細)を使って自分で申告。
どちらを選んでも、自己負担2,000円を超える分が税金から差し引かれるという仕組みそのものは同じです(控除の計算過程や配分は異なります)。
ルートの選び方フローチャート
- その年に確定申告をする予定がある?
例:住宅ローン控除の初年度/医療費控除/副業や株の申告/寄附先が6自治体以上 など
→ はい:ふるさと納税も確定申告で申請(※ワンストップは無効)
→ いいえ:次へ - 寄附先の自治体は「5自治体以内」?(同じ自治体の複数回寄附は1カウント)
→ はい:ワンストップ特例を利用可能
→ いいえ:寄附は確定申告で申請
住所・氏名を年内に変更した? ワンストップ利用者は、変更があった場合に各寄附先へ変更届の提出が必要。未対応だと適用漏れの原因に。
ワンストップ特例の要件・締切・必要書類
利用要件
- その年に確定申告が不要であること(=確定申告をする年はワンストップが無効)。
- 寄附先の自治体が5団体以内であること(同一自治体への複数回寄附は1団体扱い)。
提出先と締切
- 寄附のたびに、寄附先の自治体へ申請書を提出。
- 締切は基本的に翌年1月10日必着(自治体指定の期限に従う)。間に合わない場合は確定申告へ切替。
必要書類
- 申告特例申請書(各サイト/自治体が案内)
- マイナンバー確認書類(マイナンバーカード両面、または番号通知+本人確認書類)
- 本人確認書類(運転免許証等)
住所・氏名が変わったら
ワンストップ申請後に変更があれば、各自治体へ「変更届」を提出。放置すると適用漏れ→確定申告で再申請が必要になります。
確定申告で寄附金控除を申請する手順
- 寄附受領書(寄附金受領証明書)または寄附明細を用意(ポータルサイトから一括取得できる場合あり)。
- e-Taxまたは紙の申告書で、寄附の内訳を入力・添付。
- 住宅ローン控除の初年度や、医療費控除などと同時に申請可能。
- 提出後、所得税は還付(口座振込)。住民税の減額は翌年度の住民税で反映。
ワンストップを出していても、確定申告をすれば申告内容が優先されます。すべての寄附を申告にまとめて入力しましょう。
住宅ローン控除と上限枠の関係(注意点)
住宅ローン控除と寄附金控除は、所得税・住民税という同じ「器」を取り合います。とくに以下は上限(枠)の影響で、思ったより控除されないことがあります。
- 所得税が少ない年:住宅ローン控除で所得税がほぼ相殺されると、寄附分の一部は住民税側で調整されます。
- 住民税の枠:住宅ローン控除の一部が住民税で使われると、その分だけ寄附の反映余地が小さくなる場合があります。
実務アドバイス:初年度の住宅ローン控除で確定申告をする年は、必ず確定申告で寄附も合わせて申請し、住民税枠の使われ方を把握しましょう。寄附の上限目安は各ポータルのシミュレーターで試算が安全です。
いつ反映される?(還付・住民税の時期)
| 手続きルート | 所得税 | 住民税 | 備考 |
|---|---|---|---|
| ワンストップ特例 | なし(還付は発生しない) | 翌年度6月以降の住民税で減額 | 給与天引き(特別徴収)で実感 |
| 確定申告 | 申告後に還付(口座振込) | 翌年度6月以降の住民税で減額 | 住宅ローン控除初年度と同時申請可 |
よくある勘違い&ミス対策Q&A
Q. 年末調整でふるさと納税の申請はできますか?
A. できません。ワンストップか確定申告で行います。
Q. 途中で転居や改姓がありました。ワンストップはどうなりますか?
A. 各寄附先の自治体へ変更届が必要。未提出だと適用漏れの恐れ。間に合わない場合は確定申告で救済できます。
Q. 寄附先が6自治体以上になりました。
A. ワンストップの対象外になるため、確定申告で申請してください。
Q. 初年度の住宅ローン控除で確定申告予定。ワンストップを出してしまいました。
A. 問題ありません。確定申告で全ての寄附を入力すれば申告内容が優先されます。
手続き前チェックリスト
- 今年、確定申告の予定があるか確認(住宅ローン控除初年度・医療費・副業など)。
- 寄附先は5自治体以内か(超えるなら確定申告)。
- ワンストップなら翌年1/10必着のスケジュールを確保。
- マイナンバーと本人確認書類のコピーを用意。
- 確定申告なら寄附受領書(または寄附明細)を一式ダウンロード。
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