日本製鉄(Nippon Steel)による米鉄鋼大手USスチールの買収計画をめぐり、トランプ米大統領が2025年5月23日に「承認する意向」を公式SNSで打ち出しました。
バイデン政権下でいったん阻まれた大型M&Aが、なぜいま動き出したのか。
本記事では経緯から今後の課題までを分かりやすく整理します。これを読めばニュースの流れと影響度が一気に把握できます。
買収計画の背景とこれまでの経緯
日鉄の買収提案と狙い
日鉄は2023年12月、総額149億ドル(約2.1兆円)でUSスチールを完全買収する案を提示しました。
既存設備の近代化と北米市場シェア拡大が狙いで、本社所在地はピッツバーグ維持、現行労使協定尊重を表明しています。
バイデン政権による“待った”
2024年3月、バイデン政権は国家安全保障を理由に大統領令で買収をブロック。労働組合や超党派議員が「外国資本による米アイコン企業の流出」を問題視したためです。
再浮上の兆し
2025年に入り、CFIUS(対米外国投資委員会)の追加協議で安全保障対策が詰まったと報じられ、トランプ氏の発言が注目されていました。
トランプ大統領の承認表明のポイント
SNS投稿の概要
5月23日、トランプ大統領はTruth Socialに「US Steel will remain in America. This will be a planned partnership creating at least 70,000 jobs and adding $14 billion to our economy in 14 months.」と投稿。
直接「買収」とは書かないものの、公然とパートナーシップ=買収容認を示しました。
雇用・投資インパクト
投稿に盛り込まれた「7万人の雇用」「140億ドルの投資」という数字は、保守層やラストベルト州有権者へのアピールとみられます。
ピッツバーグ本社の維持も強調し、「米国の雇用確保」を印象付けました。
安全保障面の取り扱い
CFIUSで提示された防衛向け特殊鋼の供給網分離策などを踏まえ、ホワイトハウスは「対処可能」と判断したと米報道は伝えています。正式声明は今後になる見通しです。
市場と業界の反応
株価・投資家の動き
発言直後、ニューヨーク市場でUSスチール株は21%急騰。買収成立を織り込む動きが鮮明になり、日鉄株も東京市場の時間外で買われました。
日本製鉄の声明
日鉄は「大統領の英断に敬意を表する。米国鉄鋼業と製造業全体の転機になる」とコメント。早期に投資計画を具体化し、14か月以内に140億ドルを投じる方針を示しています。
労働組合・政界の声
United Steelworkers(USW)は依然として慎重姿勢を崩さず、雇用保証と賃金交渉を注視。
ペンシルベニア州の議員は「本社維持」で歓迎の一方、超党派で詳細条件を精査する構えです。
今後の手続きと課題
ホワイトハウス正式発表
最終承認にはホワイトハウスの書面リリースが必要で、数週間以内に公表される見通しです。これによりCFIUS条件・投資スケジュールが確定します。
統合作業と投資計画
日鉄は高炉刷新や電炉増設など複数プラントへの投資を計画。環境規制や労組交渉がスムーズに進むかが焦点です。
国際鉄鋼再編への影響
買収が成立すれば、粗鋼生産量で日鉄は世界2位に浮上。欧州や中国企業の再編加速、対米投資への追随など国際競争の構図が大きく変わる可能性があります。
まとめ:日米鉄鋼業界に走る追い風と課題
トランプ大統領の承認表明で、日本製鉄によるUSスチール買収は最大の政治的ハードルを越えた形となりました。
ピッツバーグ本社維持と7万人の雇用創出を掲げるこの案件は、米国内の製造業復活ストーリーとも重なり、選挙イヤーの“象徴案件”として注目度は抜群です。
もっとも、労組合意や環境投資、CFIUS細則など越えるべき実務課題は山積みで、正式完了までは予断を許しません。次の発表を待ちながら、鉄鋼業界の世界再編のゆくえを注視しましょう。
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