「結局いくら戻るの?」――住宅ローン控除の最大の関心ごとですよね。戻り額は年末ローン残高×0.7%が基本ですが、住宅の区分ごとの借入限度額と、あなたの税額(所得税+住民税の一定枠)で上限が決まります。
まずは制度の上限を押さえ、そのうえであなたの状況に当てはめていきましょう。
2025年入居でも、新築は省エネ基準適合が原則要件です。区分と証明の準備を契約前から意識しておくと安心です。
区分別の「理論上の最大控除額」(まずは上限を把握)
以下は年末残高が十分にある前提での「1年あたりの最大控除」と「総控除年数」です(控除率は0.7%)。新築等は13年、既存住宅は10年が原則。
新築(認定長期優良・低炭素)
| 世帯区分 | 借入限度額 | 1年あたり最大控除 | 年数 |
|---|---|---|---|
| 子育て・若者夫婦 | 5,000万円 | 35.0万円 | 13年 |
| 上記以外 | 4,500万円 | 31.5万円 | 13年 |
新築(ZEH水準省エネ)
| 世帯区分 | 借入限度額 | 1年あたり最大控除 | 年数 |
|---|---|---|---|
| 子育て・若者夫婦 | 4,500万円 | 31.5万円 | 13年 |
| 上記以外 | 3,500万円 | 24.5万円 | 13年 |
新築(省エネ基準適合)
| 世帯区分 | 借入限度額 | 1年あたり最大控除 | 年数 |
|---|---|---|---|
| 子育て・若者夫婦 | 4,000万円 | 28.0万円 | 13年 |
| 上記以外 | 3,000万円 | 21.0万円 | 13年 |
新築「その他の住宅」は、2024年以降の建築確認では原則対象外(経過措置は別途)。
既存住宅(中古)
| 区分 | 借入限度額 | 1年あたり最大控除 | 年数 |
|---|---|---|---|
| 長期優良・低炭素/ZEH水準/省エネ適合 | 3,000万円 | 21.0万円 | 10年 |
| その他 | 2,000万円 | 14.0万円 | 10年 |
“理論値”から“実際に戻る額”へ:計算の流れ
- その年の控除可能額(上限A)
A=min(年末ローン残高,借入限度額)× 0.7%
例)年末残高3,800万円・新築ZEH(その他の世帯:限度3,500万円)→ A=min(3,800, 3,500)×0.007=24万5,000円 - 所得税で差し引ける額(上限B)
B=あなたの年の所得税額(復興特別所得税含む) - 住民税で差し引ける額(上限C)
C=min(A−B,課税総所得×7%,13万6,500円)
住民税の住宅ローン控除は原則13万6,500円が上限の目安。 - 実際の控除額(その年)
実際の控除=min(A,B+C)
コツ:年末調整前に源泉徴収票(見込み)や給与明細から所得税見込みを把握すると、住民税にどれだけ振れるか(Cの余地)を予測できます。
年収別「イメージ」をつかむ3ケース(ざっくり目安)
ケースA:年収500万円・新築(省エネ基準適合・その他)・年末残高3,200万円
- A=min(3,200, 3,000)×0.7%=21.0万円
- B:この年収帯だと10万円前後が目安
- C:住民税の上限は最大13万6,500円
結果:B+CはAを十分カバーしやすく、満額21万円を使い切れる見込み。
ケースB:年収700万円・新築(ZEH・その他)・年末残高3,600万円
- A=min(3,600, 3,500)×0.7%=24.5万円
- B:15〜20万円台が多い
- C:住民税上限は最大13万6,500円
結果:B+CがA(24.5万円)を上回りやすく、ほぼ満額が見込める。
ケースC:年収900万円・新築(認定長期優良・その他)・年末残高4,400万円
- A=min(4,400, 4,500)×0.7%=30.8万円(残高が限度額未満)
- B:30万円超も十分ありえる
- C:Bでほぼ使い切るため住民税は使わない想定
結果:その年の控除はAの範囲内で最大約30.8万円。Bがこれを下回るなら、住民税で最大13万6,500円の補完が可能。
“満額使い切る”ためのコツ(よく効く5つ)
- 区分の確認を最優先:認定長期優良/低炭素/ZEH水準/省エネ基準のどれかで借入限度額が変わる。証明書の取得方法も変わる。
- 入居年のルールを見る:新築の「その他の住宅」は2024年以降の建築確認だと原則対象外(経過措置は別)。
- 年末残高を意識:繰上げ返済のタイミング次第で年末残高が減り、その年のA(=残高×0.7%)も縮む。初期数年の繰上げは控除との兼ね合いを試算。
- 所得税で使い切れないときは住民税で:住民税の上限は原則13万6,500円を目安に。
- 初年度→確定申告/2年目以降→年末調整:手続き漏れはゼロに。会社の締切もカレンダー化。
子育て・若者夫婦枠:該当すると借入限度額がワンランク上がり、1年あたりの最大控除も増えます(例:ZEHは3,500→4,500万円、24.5→31.5万円/年)。該当判定(入居年12/31現在など)の定義は必ず一次案内で確認を。
自分で試算する超シンプル手順(保存版)
- 住宅区分と借入限度額を特定(上の「区分別上限」を参照)。
- 年末ローン残高を用意(金融機関の「年末残高等証明書」)。
- A=min(残高,限度額)×0.7% を計算。
- B=所得税額(見込み)を確認(源泉徴収票・年末調整見込み)。
- C=min(A−B,課税総所得×7%,13万6,500円) を見積もり。
- 実際の控除=min(A,B+C) を算出。
よくある勘違いQ&A
Q:ローンが5,000万円なら毎年必ず35万円戻る?
A:いいえ。年末残高が限度額に満たない年は残高×0.7%が上限。さらにあなたの税額でも頭打ちになります。
Q:住民税でAの残りは無限に引ける?
A:いいえ。住民税の住宅ローン控除の上限は原則13万6,500円までで止まります。
Q:新築で省エネ基準を満たさなくてもOK?
A:2024・2025年入居は原則NG(経過措置の条件を除く)。
まとめ
「いくら戻るか」はA(残高×0.7%※区分の限度額まで)と、B(所得税)+C(住民税の一定枠)の綱引きで決まります。まずは自分の住宅区分と借入限度額、年末残高を押さえ、初年度は確定申告→2年目以降は年末調整の手続きを確実に。子育て・若者夫婦の該当やZEH・省エネの証明で上限がどれだけ変わるかも確認し、年末の繰上げ返済は控除との損得をシミュレーションして判断しましょう。
シリーズ内リンク
- 第1回:住宅ローン控除とは?(基本の仕組み)
住宅ローン控除とは?サラリーマンが得する仕組みをやさしく解説住宅ローン控除(正式名称:住宅借入金等特別控除)は、年末ローン残高に応じて所得税(不足分は一定範囲の住民税)から差し引ける制度。初年度は確定申告、2年目以降は年末調整に乗せればOK。2025年時点の大枠は「控除率0.7%」「新築等13年・既... - 第2回:初年度は確定申告(必要書類とe-Tax手順)
住宅ローン控除の初年度は確定申告が必要!初心者向けステップ解説マイホームを買って最初の年だけは、会社員でも自分で確定申告をします。ここを通過すると、翌年以降は年末調整に移行できます(第3回で詳述)。提出時期や必要書類は決まっており、国税庁の案内に沿って準備すれば難しくありません。なお、還付申告は翌年1... - 第3回:2年目以降は年末調整でOK(会社提出のコツ)
2年目以降は年末調整でOK!住宅ローン控除の手続きをわかりやすく初年度の確定申告を済ませたら、2年目以降は会社の年末調整で住宅ローン控除を継続できます。提出物は基本「証明書兼申告書」と「年末残高等証明書」の2点。調書方式の人は残高証明の提出が不要になる場合があります。初年度の確定申告を済ませたら、2年目... - 第5回:受けられない・減額の主因と対策
404 NOT FOUND | サラリーマンのネタ帳
コメント