書評|営業クエスト|新人からベテランまで“今日から使える”営業の攻略本

暮らし記
スポンサーリンク

『営業クエスト』(半沢ツヨシ・かんき出版)を読みました。営業の本と聞くと、「根性」「気合」「行動量」など精神論寄りの内容を想像する方もいるかもしれません。

ですが本書は、そうした抽象的な話に寄り過ぎず、営業スキルを上げるための“実践的な型”を、読みやすい単元でテンポよく提示してくれる一冊でした。

結論から言うと、特に新人営業で、これから営業に出る方、あるいは営業に出て日が浅い方は、絶対に読んで損がないと感じます。

同時に、これまで我流で営業をやってきて「結局、営業って何が正解なのか分からない」「成果が安定しない」「トークに頼ってしまう」といった悩みを持つ方にも、年数を問わず読む価値があります。

私自身も20年以上営業をやってきましたが、それでも気づく点が多く、「そうだよな」と思い返す部分がたくさんありました。

また本書は、プッシュ型・プル型を問わず、個人営業・法人営業といったB2CやB2Bのどちらかに偏った内容ではなく、どちらにも応用できる形で自分の中に落とし込める点が非常に良いと感じました。

さらに、一つ一つの単元が短めで読みやすく、本気で一気に読もうと思えば2時間程度で読み切れるのではないかと思います。くどい表現が少ないので理解しやすく、「営業クエスト」というタイトルの通り、RPGを意識した構成になっている点も飽きさせない工夫の一つだと感じました。

「営業=クエスト化」で迷いが減るのが強い

本書の魅力をひとことで言うなら、営業を「クエスト(課題)」として整理し、順番に攻略していく発想が分かりやすいところです。

営業の現場って、想像以上に“曖昧”です。上司に「とにかく行ってこい」と言われても、何をどうやって、どの順序で進めればよいかは、現場に出た瞬間に途方に暮れがちです。

新人の頃は特に、以下のような壁にぶつかります。

  • 初回訪問で何を話せばいいのか分からない
  • 雑談が続いて、結局何も進まずに終わる
  • 課題を聞けた気がするが、提案につながらない
  • 相手の反応が薄いと、自分の提案が間違っている気がする
  • クロージングのタイミングが怖くて切り出せない

この“迷い”を減らすには、営業を感覚ではなく構造で捉える必要があります。本書は、営業をクエストの集合として捉え、「今はどのクエストを攻略しているのか」を意識させてくれます。

RPGって、目的が明確だから前に進めますよね。村人に話しかけて情報を集め、装備を整え、ボスに挑む。営業も同じで、情報収集のフェーズ、信頼構築のフェーズ、提案のフェーズ、意思決定のフェーズがあり、順番をすっ飛ばすと“ボス戦に負ける”わけです。

営業をこうした流れで整理してくれるので、新人にとっては「今、自分が何をやれば良いか」がクリアになりますし、ベテランにとっても「自分はどこを雑にしているか」を点検するきっかけになります。

「営業あるある」から入るので内容がスッと入る

本書は、営業経験がある人ほど「分かるわ…」となる“営業あるある”の場面設計が上手いと感じました。

営業の本って、理想論だけが書かれていると読んでいて置いていかれます。ところが現実の営業は、理屈だけでは動きません。相手の温度感や、組織の事情、意思決定のクセ、担当者の立場など、きれいに整理できない要素が多いからです。

本書は、そうした現実を踏まえたうえで、「あるあるの場面」に対して“どう考え、どう動くか”を提示してくれます。

たとえば、次のようなシーンを想像してください。

  • 担当者は良い反応なのに、決裁者が出てこない
  • 「検討します」で終わり続けて、次がない
  • 要望を聞いて提案したのに、最後に値引きだけ求められる
  • 競合比較に巻き込まれ、価格勝負の空気になる
  • 初回は盛り上がったのに、2回目以降が急に冷える

こういう状況って、どの業界でも起きます。B2BでもB2Cでも、形は違っても「相手の心理」と「意思決定の構造」が似ています。

だから本書は、特定業界の小手先ノウハウではなく、“営業という行為そのもの”を攻略する視点を与えてくれます。

「フレーズ例・切り返しパターン」が具体的で即効性が高い

私が特に良いと感じたのは、トークの考え方だけでなく、具体的なフレーズ切り返しのパターンまで書かれている点です。

営業の学びで一番困るのは、「分かった気になる」ことです。理屈として理解しても、現場で相手の反応が返ってきた瞬間に頭が真っ白になる。これは新人だけではなく、誰でも起きます。

だからこそ、最初は“型”が必要です。型があると、緊張した場面でも言葉が出ます。言葉が出ると会話が回ります。会話が回ると、相手の情報が取れます。情報が取れると、提案が刺さります。

本書はこの“型”を丁寧に用意してくれている印象です。

たとえば、営業の現場では、こんな返しが必要になります。

  • 「今は忙しい」→ 次回につなげる一言
  • 「他社も見ている」→ 比較軸を握る切り返し
  • 「予算がない」→ 価値と優先順位を整理する問い
  • 「検討します」→ 次アクションを確実に取る設計

こうした場面で、「正しいこと」を言うだけでは前に進みません。相手が受け取りやすい言い方、相手の立場を守る言い方、相手が動ける形にする言い方が必要です。

本書の良いところは、その“言い回し”が具体的で、なおかつ押し付けがましくない点です。いわゆる強引なクロージングではなく、相手が納得して前に進める会話の作り方が中心にあります。

B2B・B2Cを問わず応用できる「普遍性」がある

営業本の中には、B2Bに偏りすぎていたり、逆に個人営業(B2C)に寄りすぎていたりするものも多いです。

しかし本書は、そのどちらにも偏っていない印象でした。これが非常にありがたいポイントです。

なぜなら、営業の本質は「誰に売るか」よりも「どう意思決定が起きるか」にあるからです。

B2Cなら、本人(と家族)が意思決定者です。B2Bなら、担当者・決裁者・経理・現場など複数の関係者がいます。構造は違いますが、共通しているのは「人が不安を感じ、納得し、理由を持って決める」という流れです。

本書は、その“納得の作り方”を中心に整理してくれているので、商材や業界が変わっても再現性があります。

特に、プッシュ型(こちらから提案を当てにいく)でも、プル型(問い合わせや紹介を起点に進める)でも、営業の各フェーズで必要な動きは大きく変わりません。

だからこそ、本書は新人にも効くし、ベテランにも効くのだと思います。

「2時間で読める」のに、再読したくなる密度

本書はテンポが良く、本気で読めば2時間程度で読み切れると思います。単元が細かく、くどい表現が少ないため、理解がスムーズです。

ただ、ここが面白いところで、読み切れるのに“再読したくなる”本でもあります。

営業って、結局は実践です。読んだ瞬間に「よし、分かった」と思っても、翌日の商談では別の展開になります。人が相手なので、教科書通りにいきません。

だからこそ、営業本は「何度も立ち返れるか」が重要です。困ったとき、壁にぶつかったとき、「あの章にヒントがあったな」と戻れる本が強い。

本書は、単元が短いので、必要なところに戻りやすいのもメリットだと感じました。

読んで終わりではなく「現場で落とし込む」ための読み方

ここからは、私なりの読み方の提案です。営業本は、読むだけだと成果に直結しません。ですが、読み方を工夫すると“実務”に変わります。

おすすめは、次の3ステップです。

  • ステップ1:一気に読んで全体像を掴む(まずは2時間でOK)
  • ステップ2:自分の弱点の章だけを再読する(課題に合わせて)
  • ステップ3:商談前に「使うフレーズ」を1つだけ決めて持ち込む

ポイントは、全部やろうとしないことです。全部やろうとすると、現場で混乱します。

たとえば「次回アポを取る一言」だけでも変わります。あるいは「検討します」と言われたときの返しを一つ用意するだけでも、商談の空気が変わります。

RPGで言えば、最初から最強装備を揃える必要はありません。まずは武器を一つ強化して、次のボスに挑む。その積み重ねでレベルが上がります。

営業も同じで、小さな改善の積み重ねが成果の安定につながります。

こんな人におすすめ(まとめの前に)

最後に、改めて「どんな人に刺さるか」を整理します。

  • これから営業に出る新人:まず“営業の地図”として持つべき一冊
  • 営業に出て日が浅い人:切り返しや型があるので即効性が高い
  • 我流で成果が安定しない人:営業の本質と流れを再整理できる
  • トークに頼ってしまう人:対話設計・展開の作り方が学べる
  • B2B/B2Cどちらもやる人:普遍性が高く応用できる

逆に言えば、「営業は天性の才能」「センスがすべて」と思っている人ほど、読んで視界が変わる可能性が高いです。

まとめ|“営業の攻略本”として一度は読んでおきたい

『営業クエスト』は、営業を感覚ではなく構造で捉え直し、行動に落とし込むための一冊でした。

特に新人の営業の方で、これから営業に出ようとしている方や、まだ営業に出て日が浅い方は、絶対に読んだ方が良いと思います。

また、これまでずっと我流で営業をやってきて、営業の本質や方向性、やり方が分からないという方も、年数に関係なく読む価値があると感じました。

営業歴20年以上の私でも、「そうだよな」と思い返す場面が多く、学び直しのきっかけになりました。

もちろん、完全に自分の中に落とし込むには、現場での実践と失敗の積み重ねが必要です。ですが、その“失敗の質”を上げてくれるのが良い営業本です。

営業をゲームのように攻略し、レベルアップしていきたい方にとって、本書は心強い相棒になるはずです。まずは一度読んでみることをおすすめします。

コメント

タイトルとURLをコピーしました