日産が国内で18年ぶりとなる早期退職募集──そんなニュースに、クルマ好きはもちろん、ビジネスの最前線で働く30代のあなたも大きな不安を抱いたのではないでしょうか。
「これってリストラ？ 日産は本当に大丈夫？」と気になりつつ、忙しさに追われて深掘りできないままモヤモヤを抱えている人は少なくありません。
この記事では、日産の最新決算や世界販売実績、今後の電動化投資計画までをわかりやすく整理し、「早期退職は何を意味し、私たちビジネスパーソンにどんな影響があるのか」を解説します。
読み終えるころには、日産の置かれた厳しい現状と再建シナリオが頭に入り、株式投資やキャリア選択で“いま押さえるべきポイント”が具体的に見えてくるはずです。
日産の現状と経営課題
世界販売低迷と収益悪化
2024年度の日産世界販売は前年比4％減の370万台にとどまり、主要市場の北米と中国で苦戦が続きました。利益率も2.1％とトヨタの8％に大きく見劣りし、「規模は維持できても稼げない体質」が鮮明です。
電動化競争での出遅れ
EV戦略の再構築を図るものの、主力リーフは発売から15年近く経過し、テスラやBYDが価格を下げた結果、シェアを急速に奪われています。
欧州ZEV規制や米国EV税優遇の恩恵を十分に取れず、電動化ロードマップの遅れが痛手となっています。
コスト構造の硬直化と円安影響
国内工場保有比率が高い日産は、円安メリットよりも部品輸入コスト増が直撃。
さらに中途半端に残る過剰生産能力が固定費を押し上げ、「作れば作るほど利益が薄まる」状態です。結果として人員削減と工場再編を避けられない構造が浮き彫りになりました。
早期退職募集の概要
募集人数・対象部門・実施時期
日産は 2025年7〜8月に事務系社員数百人規模の早期退職募集を実施します。
対象は45歳以上かつ勤続20年以上のホワイトカラーで、国内での募集は2007年以来18年ぶりです。
待遇条件とパッケージの中身
退職金上乗せは平均24カ月分相当、再就職支援会社への登録費用を会社負担とするなど、「軟着陸型リストラ」の色合いが濃い内容。
加えて、在籍しながら転職活動ができるキャリアセミナー・再教育プログラムを提供する点も特徴です。
社員・労組の反応と想定インパクト
労組は当初「削減ありき」と批判的でしたが、手厚いパッケージに一定の理解を示しています。
ただし管理部門のノウハウ流出が懸念材料で、短期的にコストは減っても、長期的な組織力低下が避けられるかが焦点となります。
早期退職が示す日産の再建シナリオ
人員削減で浮く資金の使途
年間約100億円の人件費削減で生まれるキャッシュは、EV・ソフトウェア投資へ再配分される予定です。
とりわけ次世代EV専用プラットフォーム「CMF-EV2」に集中投資し、2027年に高効率バッテリー搭載車を投入する計画です。
国内事務系スリム化の狙い
国内管理部門は長年「多重承認プロセス」に象徴される硬直体質が指摘されてきました。
経理・総務・購買をデジタル化し、ペーパーレス化による処理時間50％削減を目標に掲げ、機動的な意思決定につなげる考えです。
グローバル再編との連動
今回の日本国内削減は、タイ工場閉鎖や米国早期退職と連動したグローバルリストラ2万人計画の一部。
拠点ごとに得意車種を絞り込み、部品共通化率を80％へ引き上げることで規模の経済を追求します。
今後の日産の事業計画と注目ポイント
電動化・ソフトウェア投資の優先順位
2026年度までに研究開発費を年8,000億円へ増額し、その6割を電動化・車載OS開発に充てます。
特に自社OS「Nissan Ariya OS（仮称）」でOTAアップデートやサブスク機能を強化し、“走るスマホ”化を狙います。
アライアンス戦略と北米・中国の巻き返し
ルノー・三菱とのアライアンス新枠組みでは、車両プラットフォーム共有を拡大。
北米ではピックアップEV、中国では小型EVブランド「启辰（ヴェヌーシア）」テコ入れにより、2027年度に世界販売450万台へ回復を目標としています。
中期経営計画と株価・業績見通し
中期計画「The Arc 2030」では営業利益率5％、ROE10％を掲げ、構造改革を前倒しで実行。
株価は早期退職発表後に一時▲6％まで下げましたが、コスト削減効果と新EVラッシュへの期待で持ち直す可能性もあります。
ビジネスマンが取るべきアクションと私の考え
日産株投資を考える際の視点
投資家目線では、「2026年の電動化成果が見えるか」が最大の材料。短期での株価波乱は覚悟しつつ、
- EV販売台数の四半期推移
- 研究開発費の実行率
- 早期退職による固定費削減額
を並行チェックすることでリスクを抑えられます。
サプライチェーンで働く人のリスク管理
取引先の中小部品メーカーは、生産車種の急減による受注減少を想定し、複数OEM向けの販路拡大や二次電池など成長分野への転換を急ぐ必要があります。
キャリア戦略としての早期退職制度の読み解き
大企業の早期退職は「追い出し」ではなくキャリア自律促進策へシフトしています。
退職一時金と再教育サポートを「社外MBA」に充てるなど、自分の市場価値を高めるチャンスとして前向きに活用する姿勢が鍵です。
まとめ
日産が打ち出した早期退職募集は、人員削減のための“痛み”であると同時に、電動化投資へ経営資源を振り向ける“覚悟”の表れです。
短期的にはコスト削減と組織のスリム化が進む一方、ノウハウ流出や士気低下という副作用も抱えています。
しかしEV・ソフトウェア分野への大胆な資金再配分とアライアンス強化が実を結べば、2027年以降の復活シナリオも十分描けます。
30代ビジネスマンにとっては、投資・転職・取引先戦略のずれにおいても「日産が次の3年間で示す電動化成果」が判断基準。モヤモヤを情報に変え、主体的なアクションにつなげていきましょう。
コメント