「KGIを目標に置いたのに行動が変わらない…」――その原因の多くは、KGI(最終指標)とKPI(中間・行動指標)の使い分けが曖昧なことにあります。
本記事では、まず違いを明確にし、明日からの運用に役立つ具体例とチェックリストをまとめました。
KGIとKPIの一番大きな違い
KGI(Key Goal Indicator)は「最終的に達成したい結果」を数値で表した指標です。売上、利益、オンタイム率、合格率、月間PV、LTVなどが該当します。これらは多くの場合、遅行指標(結果)です。
KPI(Key Performance Indicator)は「KGIを動かすための中間・行動に近い指標」。商談化率、初回返信時間、記事公開本数、内部リンク追加数、一次試作のサイクルタイム、在庫回転日数など、先行指標(原因)を中心に据えるのが基本です。
項目 | KGI | KPI |
---|---|---|
役割 | 最終ゴールの達成度を測る | ゴールを動かす「行動の質・量」を測る |
時間軸 | 結果(遅行) | 原因(先行) |
コントロール | 現場からは直接制御しづらい | 現場が今日から変えられる |
更新頻度 | 月次・四半期など | 日次・週次など |
例 | 売上・利益・納期遵守率・月間PV | アポ獲得件数・初回返信時間・記事公開本数・WIP上限制御率 |
なぜ「KGIだけ」では行動が変わらないのか
KGIは結果指標のため、見ても「明日何を増やす/減らすべきか」が直感的に分かりません。現場の手が止まり、会議が「反省会」になりがちです。逆にKPIは行動に近いので、日々の打ち手に直結します。たとえば「初回返信時間を2時間以内に」や「今週は記事を4本公開」など、具体化が容易です。
よくある誤解と正しい理解
- 誤解1:「KPIはたくさん置くほど良い」
→ 正:人が本気で回せるのは3〜5個。優先順位をつけ、先行性・可制御性の高いものに絞る。 - 誤解2:「率だけ見れば十分」
→ 正:率(質)と件数(量)をセットで追う。例:商談化率×接触件数。 - 誤解3:「人手入力で毎日集める」
→ 正:まず自動化(取得元の一本化、タグ設計)。更新されないKPIは存在しないのと同じ。 - 誤解4:「KPI=なんでも数字」
→ 正:虚栄指標(単なるフォロワー数など)を避け、KGIに効く因果の仮説がある指標に限定する。
具体例:業務別のKGIとKPI
1)営業(BtoB新規)
KGI:四半期新規売上◯千万円
KPI(先行):週のアポ獲得件数、初回提案までの所要日数、決裁者同席率、上位プラン提示率
使い分け:売上が未達でも、アポが目標を満たしていれば原因は後段(提案〜決裁)にあると切り分け可能。
2)ブログ/SEO(アフィリエイト含む)
KGI:月間収益◯円/PV◯万
KPI(先行):週の新規記事本数、既存記事のリライト本数、内部リンク追加数、CTR改善のABテスト本数、CTA設置率
使い分け:PVが伸びない時、記事の供給量や内部リンクが不足していないかをKPIで即座に検知できます。
3)受注生産(納期遵守)
KGI:オンタイム率◯%
KPI(先行):工程間WIP上限遵守率、段取り替え平準化率、一次不良の48h是正完了率、検査スロット稼働率
使い分け:遅延の多発を「検査の滞留」や「段取りの偏り」といった具体行動に紐づけて改善できます。
より多くの実例が必要な方は:成果につながるKPI例10選|営業・マーケ・組織マネジメントで使える指標
先行指標(KPI)を選ぶための簡易チェック
- 現場が今日から増減できるか?(可制御性)
- 数週間後のKGIに効くと説明できるか?(先行性)
- 定義が一意で、データ源が決まっているか?(明確性・測定可能性)
- 日次〜週次で更新できるか?(頻度)
- ガードレール(品質・安全)を1つ含んでいるか?
ミニ演習:これはKGI?それともKPI?
- 「月間売上3,000万円」 → KGI(結果)
- 「初回返信までの平均時間を2時間以内に」 → KPI(先行)
- 「記事の週次公開本数を4本」 → KPI(先行)
- 「オンタイム率95%」 → KGI(結果)
- 「内部リンクの週次追加数10件」 → KPI(先行)
実務への落とし込み
違いを理解したら、次は設計と運用です。KGIからKPIへ因数分解し、先行指標を3〜5個に絞って定義・目標値・更新頻度・責任者を決めます。運用は日次(先行)/週次(中間)/月次(KGI)のリズムで回し、効いていないKPIは遠慮なく差し替えましょう。
詳しい作り方は、設計編で体系的に解説しています:KGIを達成するために必須!成果に直結するKPI設定の思考法
用語の周辺整理
- KGI:最終ゴールの達成度(遅行)
- KPI:ゴールに効く行動指標(先行)
- KSF:成功要因。KPIを選ぶ「着眼点」
- OKR:目標(O)と主要な成果(KR)。KGI/KPIと併用可
まとめ
KGIは「どこへ行くか」、KPIは「どう動くか」。違いを押さえ、先行性と可制御性の高いKPIを3〜5個に絞って運用すれば、日々の行動がKGIへと貫通します。次は、設計と習慣化へ進みましょう。
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