「ボーナスをもらったのに、手取りが思ったより少ない/翌月の給与まで減った気がする…」
という違和感の正体は、①賞与特有の源泉徴収(ボーナスは“別枠”の税率)、②賞与にもかかる社会保険料(健康保険・厚生年金・雇用保険等)、③年末調整の追加徴収(不足分の精算)の3点に集約されます。
加えて、今年の合計課税が増えると翌年6月からの住民税にも波及します。
先に要点だけ(忙しい人向け)
- 賞与は給与と税率の決め方が違う:前月の給与水準と扶養数をもとに「賞与に対する源泉徴収税額の算出方法」で固定に近い率を当てます。給与の累進課税と計算ロジックが異なるため、想定より天引きが大きいことがある。
- 社会保険料はボーナスにも課金:健康保険・厚生年金・雇用保険・(対象者は)介護保険が、賞与額に対してかかる。賞与は額面が大きいので総控除が一気に増える。
- 年末調整で“追加徴収”が起きる:配偶者控除の判定ズレ、副業・残業増、保険料控除の未反映などで不足税額の一括回収が12月給与で行われ、手取りが下がる。
- 翌年の住民税が上がる可能性:今年の課税が増えると、翌年6月分からの住民税が上昇し、手取りが(さらに)圧迫される。
仕組みを3分で理解:ボーナスにかかる税・社保
① 賞与の源泉徴収は“専用ルール”
通常の給与は月ごとの累進カーブで源泉徴収しますが、賞与(ボーナス)は直前月の「社会保険料控除後の給与」水準と扶養数をベースに賞与用の税率(表)を当てはめて計算します。結果、給与と同じ比率で考えるとズレるのが典型です。
② 社会保険は賞与にもかかる
健康保険・厚生年金・雇用保険(対象者は介護保険を含む)は、賞与額(端数処理あり)にそれぞれの料率を掛けて天引きします。
※具体の料率や端数処理・上限は年度・地域・制度で異なるため、会社の通知・健康保険組合/協会けんぽ・年金機構の最新案内で確認してください。
③ 年末調整での追加徴収
1年分の給与等から本来の所得税額を再計算し、差額を12月給与で精算します。配偶者(特別)控除の条件変動、残業・賞与増、生保控除の未提出、副業収入などで不足税額が出ると、手取りが一時的に下がります(逆に還付になる人もいます)。
「期待より少ない」の典型ケース5つ
- 賞与に対する源泉率が想像より高い:前月に残業や手当で給与が膨らむと、賞与の源泉率が上振れし、天引きが増えます。
- 社会保険の控除がどっさり乗る:賞与は一度の支給額が大きいので、健康保険+厚生年金+雇用保険の合計が数万円〜十数万円単位で差し引かれることも。
- 年末調整の追加徴収が同時発生:12月は賞与+給与に加え、不足税の精算が重なって手取り感が落ちる。
- 社内の積立・財形・持株会が賞与天引き:任意の制度でも、賞与時に多めに控除される設計の会社もあります。
- 住民税と混同している:住民税は翌年6月からの金額に反映。今の減少は住民税が原因ではない(ただし翌年以降の手取りには効いてきます)。
かんたん概算テンプレ(自分の数字に差し替え)
※料率は会社・健康保険組合・地域で異なるため、実際の通知の数値に置き換えてください。
賞与の概算手取り = 賞与額面
−(健康保険料:賞与額面 × H%)
−(厚生年金:賞与額面 × P%)
−(雇用保険:賞与額面 × U%)
−(介護保険:該当者のみ 賞与額面 × C%)
−(源泉所得税:賞与額面 × 賞与用税率R%)
−(会社独自の天引き:財形・持株会など)
チェックポイント:「H・P・U・C・R」の%と、端数処理(千円未満切捨て等)の有無を必ず確認。
年末調整が手取りに効くパターン
- 追徴(手取り↓):配偶者の所得見込みが増えた/生命保険料控除の申告漏れ/途中入社・昇給で源泉が不足/副業・原稿料・アフィリエイト等の雑所得があった など。
- 還付(手取り↑):住宅ローン控除が2年目以降で年末調整に反映/生保・地震保険等の控除が増えた/寄附金控除(ふるさと納税)を確定申告で申告する予定 など。
関連:年末調整ミス10選と提出前チェック/住宅ローン控除の年末対応
翌年の住民税にどう波及する?
住民税は前年の課税所得をもとに、翌年6月〜翌々年5月にかけて課されます。今年の賞与で課税が増えれば、来年6月からの住民税が上がる=手取りがさらに圧迫される可能性があります。
春〜初夏に届く住民税決定通知書で金額を確認し、家計の固定費を調整しましょう。
対策:手取りの“落差”を小さくする5ステップ
- 会社の「支給・控除内訳」通知を確認:賞与に適用される各保険料率・源泉率・社内天引き(財形等)の有無を事前に把握。
- 年末調整の結果見込みをチェック:配偶者控除・生保控除・ふるさと納税の取扱いを整理。不足が出そうなら資金繰りを用意。
- 賞与の使い道を“3つの箱”で先取り:「固定費の前倒し」「短期予備費」「自己投資・ご褒美」に分け、翌月給与の手取り減でも生活が揺れない設計に。
- 翌年の住民税上昇に備える:6月以降の手取り減を見越し、通信・サブスク・保険などの固定費を春までに見直す。
- 副収入・年収の壁の確認:家族の社会保険・扶養手当・税扶養の要件に影響が出ないか総点検(制度は年度で変わり得るため最新ルールを確認)。
チェックリスト(コピペOK)
- □ 賞与通知:源泉率R%、社保率H/P/U/Cを把握した
- □ 会社独自の天引き(財形・持株会・積立)の有無/比率を確認
- □ 年末調整:追徴・還付の見込みを確認(ミスチェック参照)
- □ 翌年住民税:6月以降の手取りシミュを家計に反映
- □ 扶養・社会保険の要件:家族の年収見込みの更新
よくあるQ&A
Q. 賞与の源泉所得税が高すぎる気がします。翌月に調整されますか?
A. 賞与の源泉は専用表で計算され、年末調整で年間トータルの税額に整合されます。過不足は12月(または退職時)に精算されます。
Q. 社会保険の料率は誰が決めていますか?会社ごとに違う?
A. 健康保険は協会けんぽ/組合健保で、厚生年金は全国一律の料率(年度で変動あり)がベースです。会社の案内で最新を確認してください。
Q. 住民税はいつから増えますか?
A. 今年の所得(賞与含む)は、翌年6月〜翌々年5月の住民税に反映されます。6月の給与明細を要チェック。
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