4%ルールは、老後やFIRE(早期リタイア)で資産を取り崩して暮らす際の目安となる安全率です。
ざっくり言えば、保有資産の4%を毎年取り崩しても、理論的に長期で資産が持続しやすいという考え方。
これを言い換えた25倍ルール(年間支出×25=必要資産)もセットで覚えると実務に使いやすくなります。
1.4%ルールとは(25倍ルール)
4%ルールは、初年度に保有資産の4%を取り崩し、次年度以降は物価上昇(インフレ)に合わせて取り崩し額を微調整していく考え方です。元々は長期の市場データをもとに、株式+債券を組み合わせた分散投資で検証されてきました。
必要資産はシンプルに年間支出×25倍で概算できます(=25倍ルール)。たとえば年間支出が300万円なら必要資産は7,500万円。この水準に達していれば、初年度の取り崩しは300万円(=7,500万円×4%)が目安です。
なお、投資の世界で有名な計算ルールまとめ(72の法則ほか)の中で紹介した114の法則(4倍までの年数)は、資産形成期の複利の直感を磨くのに役立ちます。
形成期と取り崩し期、両方の“感覚”を持っておくと意思決定がブレにくくなります。
2.かんたん計算手順(家計シート対応)
- 年間支出を確定(家計簿アプリや通帳・クレカ明細で12か月合計)。
- 年間支出を25倍して、目標の必要資産を出す。
- ポートフォリオは株式+債券+現金で分散(年齢・性格に応じて配分)。
- 初年度の取り崩し=保有資産×4%。翌年以降はインフレ率に合わせて金額を増減。
- 年1回、取り崩し額と資産配分を見直し(相場が大きく動いた年はリバランスも)。
取り崩し額は「率」ではなく「金額」で管理するのが4%ルールの肝です。収入がなくなるFIRE期は、毎月のキャッシュフローが読みやすいほど心理的な安定が増します。
3.取り崩しシミュレーション(家計別3パターン)
ケースA:年間支出240万円(毎月20万円)
- 必要資産:6,000万円(=240万円×25)
- 初年度取り崩し:240万円/年(=6,000万円×4%)=月20万円
- 想定:株式と債券の分散が効きやすい水準。住居費が軽い世帯や地方在住に現実的。
ケースB:年間支出300万円(毎月25万円)
- 必要資産:7,500万円
- 初年度取り崩し:300万円/年=月25万円
- 想定:持ち家×節約基調または賃貸×低コスト生活。物価上昇時は支出の固定費見直しが鍵。
ケースC:年間支出360万円(毎月30万円)
- 必要資産:9,000万円
- 初年度取り崩し:360万円/年=月30万円
- 想定:都市部世帯・教育費や旅行費を重視。サイドFIRE(一部労働収入の併用)だと安全域が広がる。
名目リターンとインフレの関係
長期の前提は名目リターン − インフレ率 = 実質リターンです。たとえば名目5%でインフレ2%なら実質3%。4%の「金額」取り崩しは、市場やインフレにより元本の増減がぶれる点を理解しておきましょう。
ボラティリティ対応(簡易ガードレール)
- 前年末評価額が大きく減った年は、取り崩し増額を見送る(物価連動を一時停止)。
- 評価額が大きく増えた年は、取り崩しをインフレ以上に微増して生活の満足度を調整。
- 一定の現金クッション(6〜24か月分)を持ち、暴落時の狼狽売りを予防。
4.よくある落とし穴と対策
- 落とし穴:4%を“毎年の率”で回す → 対策:4%は初年度の金額基準。以後は物価調整が基本。
- 落とし穴:株式100%で取り崩し開始 → 対策:債券・現金で順番リスク(退職直後の暴落)を緩和。
- 落とし穴:固定費が高すぎる → 対策:住居・通信・保険を見直し、必要資産≒支出×25を圧縮。
- 落とし穴:インフレ軽視 → 対策:取り崩し額の物価連動と、株式の実質成長に賭ける設計。
- 落とし穴:税・社会保険を非考慮 → 対策:NISA・iDeCo、課税口座の引き出し順番を最適化。
5.目標達成までの積立設計(形成期のコツ)
必要資産が遠く見えるときは、まず複利の威力を体感しておきましょう。毎月の定額積立を何年続けるとどこまで到達するかは、下記の関連記事が具体的です。
▶ 複利の力を最大化!毎月1万円投資でいくらになる?【年利別シミュレーション】
- 収入が増えたら掛金を上げる(昇給・ボーナス時に自動で割合を引き上げ)。
- ドルコスト平均法で市場ノイズに慣れる(機械的に続ける仕組み化)。
- 資産配分は年1回点検(年齢・家族状況・目標の変化を反映)。
形成期には、以下の基礎知識を一度でおさらいしておくと判断が速くなります。
▶ 投資の世界で覚えておきたい!72の法則と似た有名な計算ルール5選
6.関連記事・内部リンク(回遊ルート)
- 基礎の計算感覚を一気に掴む:72の法則ほか“有名ルール”5選
- 積立のリアルを数字で確認:毎月1万円×年利別シミュレーション
この記事→「計算ルール5選」→「毎月1万円シミュ」へと進む導線で、形成〜取り崩しまでの全体像が自然に理解できます。
7.Q&A
Q1:4%では不安。3%に下げた方が安全?
安全域は広がりますが、必要資産は支出×約33倍に増えます。家計やメンタルに合わせて3.5〜4.0%で調整する世帯も多いです。
Q2:株式と債券の割合は?
形成期はリスク許容度に応じて株式比率を高め、取り崩し開始時に現金・債券クッションを厚くするのが一般的。年1回のリバランスでブレを抑えます。
Q3:取り崩しは口座のどこから?(NISA・iDeCo・課税口座)
税制メリットを残すため、課税口座→NISA→iDeCoの順で取り崩す方針が検討候補。具体の税・社会保険への影響は各家庭で差が大きい点に注意。
Q4:インフレが高いときは?
取り崩し額のインフレ連動を一時的に緩める、生活の変動費で吸収する、現金クッションを厚めに持つ、といった可変対応で凌ぎます。
本記事は一般的な情報提供を目的としています。投資判断はご自身の責任で行い、必要に応じて専門家へご相談ください。

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