「クラウド」とは、インターネット越しに計算(サーバ)・保存(ストレージ)・ネットワーク・データベース・AIなどのIT資源を、必要なときに必要な分だけ使える仕組みのこと。
自社でサーバを買って設置・保守する代わりに、オンデマンドで借りるイメージです。DXの推進基盤として、スピード・コスト・信頼性の面で大きな利点があります(DX解説)。
クラウドのメリット(要点)
- 初期費用が小さい:使った分だけ支払う従量課金(OPEX中心)。
- すぐに拡張/縮小:アクセス急増にもオートスケールで対応。
- 高い可用性:データセンターの冗長化(複数拠点)を簡単に活用。
- 最新機能がすぐ使える:AI、データ分析、セキュリティ機能を即導入(ChatGPTのような生成AI活用とも親和性)。
3つのサービス形態(IaaS / PaaS / SaaS)
区分 | ざっくり説明 | 利用例 | 管理範囲(利用者側) |
---|---|---|---|
IaaS | 仮想サーバ・ストレージ等を借りる | 仮想マシン、ブロック/オブジェクトストレージ | OS~アプリは自分で構築・運用 |
PaaS | アプリ実行基盤を借りる | マネージドDB、アプリ実行環境、サーバレス | コードと設定に集中(OS等はクラウド側) |
SaaS | 完成したソフトをサービスとして利用 | メール、グループウェア、CRM、BI | アプリ利用と設定のみ |
基本方針:まずSaaSで置き換えられるところはSaaS、独自性が必要なところはPaaS/サーバレス、どうしても細かな制御が必要な部分だけIaaS、の順で検討すると効率的です。
導入形態(パブリック/プライベート/ハイブリッド/マルチ)
- パブリッククラウド:一般向けの共有基盤を論理分離して利用(多くの企業の主戦場)。
- プライベートクラウド:自社専有基盤。ガバナンスや特殊要件で選択。
- ハイブリッド:オンプレとクラウドの併用(段階移行に現実的)。
- マルチクラウド:複数クラウドの使い分け(ロックイン/障害リスク分散)。
クラウドの主要コンポーネント
- コンピュート:仮想マシン、コンテナ(Kubernetes)、サーバレス(関数実行)。
- ストレージ:ブロック/ファイル/オブジェクト(静的サイトやバックアップはオブジェクトが定番)。
- データベース:RDB、NoSQL、データウェアハウス、時系列DB。
- ネットワーク:VPC、ロードバランサ、CDN、VPN/専用線。
- 管理/セキュリティ:ID/権限(IAM)、鍵管理、WAF、監査ログ。
- 運用基盤:監視(メトリクス/ログ/トレース)、IaC(Terraform等)、CI/CD。
コストの考え方(FinOpsの基本)
- 料金の主な内訳:コンピュート時間、ストレージ容量、データ転送(特に外向き)。
- 割引の使い分け:予約/定額、長期割引、スポット/プリエンプティブ(中断容認ジョブ向け)。
- 可視化が命:タグ/ラベルで部門・プロジェクト別に原価を見える化。
- アーキテクチャで節約:キャッシュ/CDN、適切なDBクラス、夜間停止、サーバレス活用。
セキュリティは「共有責任モデル」
クラウド事業者はクラウドの中身(物理/仮想化層)を守り、利用者はクラウド上での設定・アプリ・データを守る、という役割分担です。まずは以下の3点から:
- 最小権限(IAM):人と機械の権限を最小化し、定期的に棚卸し。
- 暗号化:保存時/転送時の両方を暗号化。鍵管理(KMS)を標準化。
- 公開範囲の制御:ストレージの公開設定、SG/Firewall、WAFで入口を限定。
設計の型:Webサービスの基本アーキテクチャ
- フロント:静的ファイルはオブジェクトストレージ+CDN。
- アプリ層:コンテナ or サーバレスでステートレスに。
- データ:マネージドRDB(自動バックアップ/スケール)、キャッシュ(インメモリ)。
- 監視/運用:メトリクス・ログ・トレースをダッシュボード化、PDCAで運用改善。
- 信頼性:マルチAZ、RPO/RTO定義、定期的なDRテスト。
移行の進め方:6Rフレーム(現実解)
- Rehost(リホスト/リフト&シフト):そのまま移す。短期で効果。
- Replatform(リプラットフォーム):DBをマネージド化等、小改修で運用負荷を下げる。
- Refactor(リファクタ):アプリをクラウドネイティブ化(サーバレス/マイクロサービス)。
- Repurchase:SaaSへ乗り換え。
- Retire:使っていないシステムは廃止。
- Retain:当面はオンプレに残す。
まずは現状把握(台帳化)→対象の優先度付け→小さくPoC→MVP→横展開の順で(DX/PDCA参照)。
サーバレスとコンテナ、どっちを選ぶ?
観点 | サーバレス | コンテナ/Kubernetes |
---|---|---|
スピード | 最速で立ち上げやすい | 中~大規模で柔軟に拡張 |
コスト | アイドル時ゼロに近い | 常時稼働前提(最適化で低減) |
運用負荷 | 最小(基盤はマネージド) | やや高い(運用自動化が鍵) |
ワークロード | イベント駆動/バースト系 | 恒常的/複雑なサービス群 |
データとAI活用(はじめの一歩)
- データ収集:イベント・ログをストリーム/バッチでレイクへ。
- 整備:スキーマ管理、メタデータ、品質チェック(CI/CDに組み込み)。
- 活用:DWHで分析→ダッシュボード→一部は自動化/推薦へ。生成AI連携はChatGPT解説を参照。
よくある失敗と対策
- スプロール(野良リソース増殖) → 命名規則/タグ義務化、定期棚卸し、削除ポリシー。
- コスト予想外 → データ転送・ログ量・マネージドの従量を見積もり、予算アラート。
- ロックイン過度懸念 → コアは標準技術(コンテナ/IaC)、差別化領域は敢えてマネージド活用。
- セキュリティ設定漏れ → 最小権限/IaCでテンプレ化、CISベンチマーク等で継続スキャン。
そのまま使える「クラウド検討シート」
【目的(KGI)】____________________________________________ 【主要KPI(最大3つ)】可用性(__%)/コスト(月___円)/TTM(__日) 等 【対象システム】__________________________________________ 【形態】SaaS / PaaS / IaaS(理由:_____________________) 【構成案】フロント:____ / アプリ:____ / DB:____ / CDN:____ 【セキュリティ】IAM方針/暗号化/監査ログ/WAF 【運用】監視指標/アラート閾値/バックアップ/DR(RPO/RTO) 【コスト管理】タグ設計/予算アラート/リザーブ/停止運用 【移行方針(6R)】_______________________________________ 【レビュー頻度】週次/月次(PDCA)
まとめ
- クラウドはIT資源を必要な時に必要なだけ使える公共インフラ。
- SaaS優先→PaaS/サーバレス→IaaSの順で効率よく設計。
- コスト・セキュリティ・運用はIaCと標準化で仕組み化し、PDCAで継続改善。
次は、バックオフィスの制度対応でクラウド活用と相性の良いテーマへ:
そもそも インボイス制度 とは?フリーランスに与える影響
関連読み物:
コメント