「年金をもらいながら働くとカットされるらしい…」。そんな不安を抱えつつも、物価上昇や長寿リスクに備えて働き続けたいシニアが増えています。
そこで鍵を握るのが在職老齢年金。しかし制度を正しく理解しないと、思わぬ減額で「頑張って働いたのに手取りが減った」という事態にも。
本記事では、在職老齢年金の損益分岐点となる収入ラインを具体的に解説し、損しない働き方を実現するテクニックを紹介します。
さらに、収入シミュレーション表の作り方や家計管理アプリの活用術まで網羅。読み終える頃には「自分はどこまで働けるか」「いくら稼げばベストか」がはっきり見えるはずです。
在職老齢年金の基礎知識
在職老齢年金とは?
在職老齢年金は、65歳以降も厚生年金に加入して働く人が対象の仕組みです。現役収入と年金の合計が一定額を超えると、年金の一部または全部が支給停止になります。
働き方の自由度を保ちながら、受給総額を最大化するために必ず押さえておきたい制度です。
制度対象者と適用条件
対象は厚生年金加入中の老齢厚生年金受給者。月末時点で社会保険に加入していれば翌月も対象になります。
雇用形態は問わず、週の労働時間が正社員の4分の3未満でも「短時間被保険者」へ拡大中。適用条件は年々変わるため、最新情報をチェックしましょう。
支給停止調整額の仕組み
ポイントは「総報酬月額相当額」+「基本月額」の合計。65歳以上の場合、合計が月額47万円を超える部分の半額が支給停止となります。
例えば合計50万円なら(50−47)×0.5=1.5万円がカット。仕組みを理解すれば「あといくら稼げるか」を逆算できます。
損をしない受給額と収入ライン
支給停止になる年収ライン
月47万円ラインは年収にすると564万円。ただしボーナスを含む総報酬ベースで計算されるため、賞与が多い人は注意。月々の給与だけでなく、年トータルで管理しないと「年末に思わぬカット」が発生します。
手取り比較シミュレーション
年収540万円と570万円を比較すると、570万円のケースは支給停止額が増え、手取りが逆転する場合も。家計簿アプリで「給与+年金−支給停止額−税社会保険」を月次で試算すると、損益分岐が一目瞭然です。
社会保険料と税負担の注意点
支給停止分は「年金が減る」だけでなく、社会保険料や所得税・住民税を計算するベースも変わります。結果として可処分所得が想定より小さくなるので、税・保険料込みで試算することが重要です。
年金カットを避ける働き方戦略
部分勤務と賃金調整テクニック
賃金を月47万円以内に抑える最も簡単な方法は勤務日数や時間の調整。例えば週4日勤務や時短契約を導入し、役職手当・残業代をコントロールすると、年金を満額維持しながら一定の収入を確保できます。
フリーランス・副業の活用
社内で収入調整が難しい場合は、社外の業務委託や副業を活用して「厚生年金対象外」の収入を得る手も。個人事業所得は総報酬に含まれないため、支給停止ラインを回避しやすくなります。
繰下げ受給との合わせ技
働き続けて収入が高い間は年金を繰下げ、退職後に増額された年金を受け取る戦略も有効。繰下げ1年で8.4%、最大5年で42%アップ。長生きリスクに備えつつ、在職老齢年金のカットを気にせず働けます。
よくある誤解とQ&A
よくある勘違いベスト3
①「年金が全部なくなる」→カットはあくまで一部。
②「扶養内パートなら関係ない」→社会保険加入かどうかで適用が変わる。
③「退職後すぐ全額復活」→翌月から計算基準が変わるが、事業収入には要注意。
退職後の再就職時の落とし穴
退職しても**1日でも空白なく再雇用**されると、退職月が在職扱いとなり、思わぬ支給停止が発生。退職と再就職の間に「1日以上」空けるのが無難です。
企業年金との併用ルール
企業年金や確定給付年金は在職老齢年金の停止計算に含まれませんが、所得税課税対象。結果として可処分所得が減少するため、**トータル税負担**を試算してから受給開始を決定しましょう。
ライフプランに活かすシミュレーション活用
キャッシュフロー表の作り方
Excelや家計簿アプリで、70歳までの**キャッシュフロー表**を作成。給与・年金・支給停止・税社会保険・生活費を年単位で入力すれば、自動で貯蓄残高が見えます。
家計管理アプリでライン確認
マネーフォワードなどのアプリなら、**給与振込額+年金振込額**を連携するとリアルタイムで47万円ラインを可視化。通知機能を使えば「ライン超え前にアラート」が届き失敗を防げます。
FPに相談するときのポイント
FPへ依頼する際は、給与明細・年金定期便・副業収入証憑を用意し、「在職老齢年金カットを最小化したい」旨を具体的に伝えることが成功のコツ。ライフプラン表の**再計算コスト**も事前に確認しましょう。
まとめ
在職老齢年金は「働き続けたいシニア」に不可欠な制度ですが、月47万円の支給停止ラインを超えると年金が減額され、可処分所得が逆転することもあります。ポイントは、①報酬総額を正しく把握し、②部分勤務や副業で収入源を多様化し、③必要に応じて繰下げ受給を組み合わせること。
家計簿アプリやキャッシュフロー表を活用すれば、損益分岐点をリアルタイムでチェック可能。制度を知り、数字で管理する――それが「年金をもらいながら損しない働き方」への近道です。ぜひ本記事を参考に、自分だけのベストバランスを見つけてください。
コメント