営業のたびに、毎回ゼロからスライド作成をしてヘトヘトになっていませんか。人によって資料のクオリティや構成がバラバラで、「誰が作ったかで伝わり方が全然違う」「新人が資料を作れず、結局ベテランにしわ寄せが来る」という悩みもよく聞きます。さらに、過去の提案資料をうまく再利用できず、同じようなスライドを何度も作っているケースも少なくありません。
そんな属人化した営業資料をスッキリ整理し、チーム全体で使えるテンプレに変えてくれるのが、GoogleのAIノートツールNotebookLMです。
過去の提案書や実績紹介、商品説明資料などをノートにまとめておくことで、「このパターンの商談用にスライド構成を出して」「30分版と10分版の2パターンを作って」といった指示に即座に応えてくれます。つまり、NotebookLMを起点に営業スライド作成を標準化・テンプレ化できるということです。
この記事では、営業チーム向けに、NotebookLMを使ってスライドを標準化する具体的なステップを、「メリットの整理 → 準備 → 実践 → テンプレ化 → 運用」の順にやさしく解説します。単なる使い方の紹介ではなく、「どうすれば現場で回る仕組みになるか」という視点で整理しているので、マネージャーや営業リーダーの方にも役立つはずです。
読み終わるころには、「とりあえず1本、NotebookLMで営業スライドのテンプレを作ってみよう」とイメージできるようになります。同じ資料づくりに悩んでいるなら、まずはこの流れを自社版にカスタマイズしてみてください。
NotebookLMで営業スライドを標準化するメリット
属人化した営業資料を減らせる
営業資料がベテランの頭の中にしかない状態だと、「◯◯さんはめちゃくちゃ分かりやすいスライドを作るけど、他のメンバーは真似できない」という状況が生まれがちです。結果として、資料作成の負担が一部の人に集中し、チーム全体の提案力が上がらないという悪循環になってしまいます。これは、情報やノウハウが個人単位で閉じていることが原因です。
そこでNotebookLMの出番です。まず、ベテランが過去に作った提案資料や説明スライド一式をノートに集め、その内容をもとに「共通している構成」「よく使うストーリーライン」「反応の良かった説明フレーズ」などをNotebookLMに整理してもらいます。この時点で、個人が持っていた暗黙の型が、ノートという形でチームの共有資産に変わります。
そのうえで、「このノートをもとに標準的な提案スライド構成を作って」とプロンプトを投げれば、誰でも同じベースから資料を作れるようになります。つまり、NotebookLMをハブにすることで、属人化していた営業資料がチーム全体で再利用できるテンプレに変わるのです。
言いたいことがブレないストーリー設計ができる
営業資料で一番避けたいのは、「結局何を言いたいのか分からない」スライドになってしまうことです。作っている本人は理解していても、スライド構成にストーリーがなく、聞き手には断片的な情報だけが届いてしまうケースはよくあります。特に商談時間が限られている場合、最初の5〜10分で印象が決まってしまうことも多いです。
NotebookLMに過去の成功提案を読み込ませ、「この提案のストーリーを『課題→解決策→効果→次の一歩』の流れで要約して」とお願いすると、勝ちパターンの骨組みが浮き彫りになります。その骨組みをベースに、「10枚以内で伝える構成を作って」「30分版・15分版をそれぞれ作って」とプロンプトを重ねれば、時間や相手に合わせてストーリーは共通、尺だけ変えるスライドを量産できます。
こうしてストーリーラインをNotebookLM経由で固定しておけば、誰がスライド作成をしても「言いたいことがブレない」状態を維持しやすくなります。結果として、チーム全体での提案の質が底上げされていきます。
新人でも一定品質の資料が作れるようになる
新人営業にいきなり「提案資料作っといて」と丸投げすると、高い確率で「文字だらけ」「順番がちぐはぐ」なスライドが出てきてしまいます。これは新人の能力不足というより、参考にできる標準テンプレートがないことが原因です。何を真似すれば良いか分からない状態では、経験値の差がそのまま資料の差になります。
NotebookLMで作った営業スライドテンプレを用意しておけば、新人はまずその型に沿って必要な情報を埋めていくだけで、一定レベルの資料を作成できます。さらに、「このテンプレに沿ってスライドを作った新人が躓きやすいポイント」をNotebookLMに整理させれば、注意点付きテンプレとして教育にも活用できます。
結果として、ベテランはゼロから教える負担が減り、新人は迷子になりにくくなります。NotebookLMを活用したスライド作成の標準化は、「資料の質」だけでなく、「育成スピード」にも効いてくるのです。
準備編：NotebookLMとスライド素材の整理
1案件1ノートか1商品1ノートかを決める
NotebookLMで営業スライドの標準化を進める際、最初に決めたいのがノートの切り方です。ざっくり言えば、「案件ごとにノートを分ける」か、「商品・サービスごとにノートを分ける」かの2パターンがあります。どちらにもメリットがあるので、自社の営業スタイルに合わせて選ぶのがポイントです。
カスタマイズ要素が強いBtoBサービスの場合は、「顧客A向け提案ノート」「顧客B向け提案ノート」のように案件ごとにノートを作ると、議事録や見積もり条件なども含めて一気通貫で管理しやすくなります。一方、同じパッケージ商品を何度も売るBtoC寄りのサービスなら、「商品X標準資料ノート」「商品Y標準資料ノート」のように、商品ごとにノートを作った方がテンプレ化しやすくなります。
迷ったら、まずは「主力商品1つ分」を対象に1ノートを作り、そこでうまくいった切り方を他の商品・案件にも広げていくとスムーズです。NotebookLM上のノート名には、「2025_営業_商品X_スライド標準化」といった形で、年・用途・対象を入れておくと検索しやすくなります。
過去の提案資料・実績資料を集約する
ノートの方針が決まったら、次は素材集めです。ここをサボると後の精度が下がるので、初回だけは少し頑張る価値があります。集めたいのは、過去の提案書、実績紹介スライド、商品説明資料、よく使う図表などです。PDF・パワポ・テキストいずれでも構わないので、とにかくNotebookLMのノートに突っ込んでいきましょう。
特に大切なのは、「実際に受注につながった提案資料」です。これらを優先的にノートへ入れ、NotebookLMに「受注につながった資料の共通点を整理して」「よく使われているスライドタイトルを一覧にして」と依頼します。これだけで、勝ちパターンの構成要素がかなり見えてきます。
逆に、あえて「うまくいかなかった提案資料」も数本入れておき、「成功提案との違いを比較して」と頼むのも有効です。NotebookLMは、成功パターンと失敗パターンを機械的に見比べてくれるので、人間の思い込みに引っ張られない形で改善点を抽出できます。
「標準スライド」と「カスタムスライド」を仕分ける
営業スライドの標準化で大事になるのが、「すべてをテンプレにしようとしない」ことです。どの提案でも必ず説明する会社概要・実績・サービス概要などの部分は標準スライドとしてテンプレ化し、顧客ごとの課題や個別提案部分はカスタムスライドとして残す、という線引きが重要です。
NotebookLMのノート内で、「標準候補」「カスタム候補」とラベルを付けるイメージでメモを整理していきます。例えば、「この実績紹介スライドは、業界関係なく説明しているから標準」「この課題定義は顧客A特有だからカスタム」といった具合です。そのうえで、NotebookLMに「標準スライド候補だけを抽出して、1本の提案資料として並べ替えて」と頼めば、ベースとなる標準資料が見えてきます。
こうして「どこまでが共通部分で、どこから先が個別カスタマイズか」をあらかじめ整理しておくことで、以降のプロンプトも出しやすくなります。NotebookLMは、明確なルールを与えるほど力を発揮するので、この仕分け作業こそが標準化のキモだと考えてください。
実践編：NotebookLMで営業スライド構成を作る
標準プレゼンの基本アウトラインを生成する
素材と仕分けが終わったら、いよいよNotebookLMに基本アウトラインを作ってもらいます。ここで使えるのが、「標準プレゼンの型」を指定したプロンプトです。例えば、「このノート内の標準スライド候補をもとに、『自己紹介→会社紹介→課題→解決策→実績→次のステップ』の順で、全体10〜12枚のスライド構成案を作ってください」と依頼します。
NotebookLMは、ノートにある資料から適切なスライド候補を選び、タイトルと要点を整理してくれます。何パターンか案を出してもらい、「初回訪問用」「2回目以降の深掘り用」といった形でバリエーションを持たせるのもおすすめです。いずれにせよ、この段階では「完璧に整えよう」とせず、まずは数パターン試してみることが重要です。
叩き台ができたら、「このスライドは重複しているので一つにまとめて」「ここの順番を入れ替えたい」といったフィードバックをNotebookLMに返しながら、1〜2パターンの標準アウトラインに絞り込んでいきましょう。ここで決めたアウトラインが、以降のすべての営業スライドの“型”になります。
ターゲット別にバリエーションを作る
同じサービスでも、「経営層向け」と「現場担当者向け」では響くポイントがまったく違います。そこで、NotebookLMに「ターゲット別バリエーション」を考えてもらいます。基本アウトラインが決まったら、「この構成を経営層向けに最適化してください。意思決定に必要な情報を優先し、資料の枚数は8枚以内に収めてください」といったプロンプトを投げてみましょう。
同様に、「現場担当者向けには、導入後の運用イメージと工数削減の具体例を厚めに説明した構成にしてください」と指定すれば、NotebookLMは同じ素材を使いながら、伝える順番や強調ポイントを変えたスライド構成を提案してくれます。これにより、1つの標準テンプレから複数のターゲット別バリエーションを簡単に生み出せます。
営業現場では、「今日は先方に誰が出てくるか分からない」というケースも多いため、経営層・現場・情報システム部門など、よくあるターゲット別に3パターン程度アウトラインを用意しておくと安心です。NotebookLMなら、このバリエーション作りもプロンプト1つで対応できます。
時間別にショート版・ロング版を作る
商談時間が毎回読めるとは限らない以上、「30分じっくり版」と「10分ショート版」の両方を用意しておくと戦いやすくなります。ここでもNotebookLMに活躍してもらいましょう。基本アウトラインができたら、「この構成から、10分で説明するためのショート版スライド構成を作ってください。削っても影響が少ないスライド候補を明示しつつ、残すべきものだけで8枚以内にしてください」と依頼します。
NotebookLMは、「ここは詳細説明なのでショート版では省略可能」といったコメント付きで提案してくれるので、そのまま「ショート版」「ロング版」という2種類のテンプレに分けることができます。さらに、「10分版と30分版で、ストーリーが矛盾していないかチェックして」と頼めば、話の筋がブレていないかも確認できます。
こうして時間別テンプレを揃えておけば、当日の状況に応じて「今日はショート版をベースに話し、反応が良ければ後半で詳細スライドに切り替える」といった柔軟な運用も可能になります。NotebookLMがいるおかげで、こうしたバリエーションを作るコストもぐっと下がるのがうれしいところです。
テンプレ化編：再利用しやすい形に整えるコツ
ノート命名とバージョン管理で迷子を防ぐ
営業スライドの標準化を進めていくと、NotebookLM内のノートやバージョンが増えていきます。ここで整理を怠ると、「どれが最新のテンプレか分からない」「古い構成を使ってしまった」という事故が起きやすくなるので、シンプルでも良いので命名ルールとバージョン管理を決めておきましょう。
例えば、「notebooklm_sales_X_v1」「v2」「v3」のように末尾にバージョンを付け、最新版には「current」などのラベルを付けておく方法があります。ノートの冒頭に「このノートは2025年4月時点の標準テンプレです。次回見直しは2025年10月を予定」と書き込んでおくと、更新サイクルも分かりやすくなります。
NotebookLMはノート自体の複製も簡単なので、「実験的な構成を試す用ノート」と「チーム全員で使う安定版ノート」を分けて運用するのもおすすめです。こうして「遊び」と「安定」を分離しておくことで、日々改善しつつも現場が混乱しないバランスを取りやすくなります。
汎用部分とカスタム部分をテンプレ上で分離する
テンプレを実際の商談で使いやすいものにするには、「ここは必ず使う」「ここから先は案件ごとに書き換える」といった編集ポイントが一目で分かることが重要です。NotebookLMでスライド構成を作る際、「汎用部分はそのまま、カスタム部分は『◯◯を入力』などのプレースホルダを入れてください」とプロンプトで指定しておきましょう。
例えば、「顧客名」「課題の具体例」「見積金額」「スケジュール」などは毎回変わる項目です。これらをノート上で「{{顧客名}}」「{{課題概要}}」のように変数っぽく書いておくと、誰が見ても「ここは個別に差し替える場所だな」と理解できます。NotebookLMにも、「プレースホルダ部分には具体的な値を入れないでください」と明示しておけば、うっかり仮の数字をそのまま出してしまうリスクも減らせます。
このように、「汎用」と「カスタム」をテンプレ上で分けてしまうことで、再利用性は一気に高まります。特に新人や他部署のメンバーがテンプレを使うときに、「どこをどう変えれば良いか」が直感的に分かるようになるのが大きなメリットです。
チーム共有とフィードバックの仕組みを作る
どれだけ良いテンプレを作っても、使われなければ意味がありません。NotebookLMで作った営業スライドテンプレを現場に根付かせるには、チーム全員が「使いやすい」「改善に参加できる」と感じられる仕組みが必要です。
まずは、テンプレを紹介する短い勉強会や共有会を開き、「なぜこの構成なのか」「どこをカスタムすれば良いのか」を実際のスライドを見せながら説明しましょう。その際、NotebookLMのノートも画面共有し、「このノートからいつでもテンプレ構成が取り出せます」と見せておくと、心理的ハードルが下がります。
さらに、実際にテンプレを使ったメンバーから「ここが使いづらかった」「このスライドが刺さった」といったフィードバックを集め、その内容をNotebookLMのノートに追記していきます。「現場の声」欄を作り、一定数たまったらバージョンアップに反映する、というサイクルを回せば、テンプレはどんどん現場にフィットしていきます。
運用編：NotebookLMとスライド作成を定着させる
毎回の商談後に「良かった点」「改善点」をノートに記録
テンプレは作って終わりではなく、運用しながら育てていくものです。商談のたびに、「どのスライドで反応が良かったか」「どこの説明で詰まったか」を簡単にメモし、NotebookLMのノートに追記する習慣をつけましょう。箇条書きで数行書くだけでも、後から見たときのヒントになります。
ある程度メモがたまったところで、「このノートのメモから、標準スライドの改善点と提案をまとめて」とNotebookLMに依頼すれば、1ページ分の改善レポートが出てきます。それをもとに、「スライドの順番を変えてみよう」「この説明は図解を足そう」といった改善アクションを決めていけばOKです。
この「商談→メモ→NotebookLMで整理→テンプレ改善」というサイクルを回し続けることで、営業スライドは実戦を通じて磨かれていきます。NotebookLMは、そのサイクルを支える振り返りの相棒として活用できます。
教育・オンボーディングにもNotebookLMを活用する
NotebookLM＋営業スライドテンプレは、新人教育や配置転換後のオンボーディングにも大いに活用できます。例えば、「このノートにある標準スライド構成を、新人向けの研修資料に変換して」とプロンプトを投げれば、教育用に少し噛み砕いたスライドアウトラインがすぐに出てきます。
また、「新人の理解度チェック用に、クイズ形式のハンドアウト案を作って」と依頼すれば、標準スライドの内容を復習するための問題集まで自動生成できます。こうした教材も同じノートにまとめておけば、「営業資料」と「研修資料」が一体化したラーニングノートとして機能させることができます。
結果として、「資料づくり」「営業現場」「教育」の3つがNotebookLMを中心にゆるやかにつながり、チーム全体のレベルアップが加速していきます。スライド作成ツールとしてだけでなく、「学習と伝達のハブ」としてNotebookLMを位置づけると、活用の幅がぐっと広がります。
注意したい落とし穴と失敗パターン
一方で、NotebookLMを使ったスライド標準化には、いくつか注意したいポイントもあります。よくあるのが、「AIが作った構成をそのまま鵜呑みにしてしまう」パターンです。NotebookLMはあくまでアシスタントなので、最終的に「本当にこの構成で伝わるのか」を判断するのは人間の役割です。
また、「テンプレが強すぎて、顧客ごとの事情を無視した資料になってしまう」リスクもあります。テンプレはあくまでスタート地点であり、カスタムスライドでどれだけ相手に寄せられるかが勝負です。NotebookLMに「この案件のメモをもとに、テンプレのどの部分をカスタムすべきか提案して」と依頼するなど、柔軟性を保つためのプロンプトを用意しておきましょう。
最後に、情報の取り扱いにも注意が必要です。顧客名や機密情報は、必要に応じて抽象化・マスキングし、社内ルールに沿ってNotebookLMに入れる範囲を決めておきましょう。ルールさえ整えておけば、怖がりすぎる必要はありませんが、「なんとなく大丈夫だろう」で運用するのは避けた方が安心です。
まとめ：NotebookLMで営業スライド作成を軽くする
営業資料の悩みの多くは、「人によってクオリティがバラバラ」「毎回ゼロからスライド作成している」「過去資料をうまく再利用できない」といった構造的なものです。これを解消するカギは、勝ちパターンの構成を見える化し、誰でも使えるテンプレに落とし込むこと。そして、その作業を支えてくれるのがNotebookLMです。
過去の提案資料や実績をノートに集約し、標準スライドとカスタムスライドを仕分ける。NotebookLMに標準アウトラインを作らせ、ターゲット別・時間別のバリエーションを生成する。さらに、ノート命名やバージョン管理、現場からのフィードバックを通じてテンプレを育てていけば、「誰が作っても一定品質」「新人でも迷わない」営業スライドの仕組みができあがります。
大事なのは、NotebookLMにすべてを丸投げするのではなく、「整理と構成づくりはAI、自社の文脈や顧客事情を反映させるのは人間」という役割分担をはっきりさせることです。
まずは1商品・1サービスからで構いません。今日紹介した流れをもとに、小さく1本「標準スライドノート」を作ってみてください。その1本が、あなたの営業チームの資料づくりを大きく軽くしてくれるはずです。
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