会社を辞めたあと、「年末調整、今年はどうなるんだろう?」とモヤモヤしていませんか。
とくに年末近くに退職・転職した人は、会社での年末調整が受けられず、自分で確定申告をしないと税金が戻ってこないケースがとても多いです。
「源泉徴収票はあるけど、このまま放置して大丈夫?」「退職後しばらく無職だったけど、それでも確定申告って必要?」と、不安や疑問が次々と出てくると思います。
しかも、確定申告には期限があり、うっかり忘れていると払い過ぎた税金をそのままにしてしまうことにもなりかねません。
この記事では、退職後に年末調整できない人がやるべき確定申告について、
・なぜ自分で確定申告が必要になるのか
・どんな人が「申告必須」なのか
・具体的な手続きの流れと、いつまでにやればいいのか
を、初心者向けにやさしく整理してお伝えします。
読み終わるころには、「自分は確定申告が必要かどうか」と「必要なら何をすればいいか」がスッキリわかる状態を目指します。
退職後のお金の不安を減らすためにも、ぜひ最後まで読みながら、自分のケースに当てはめてチェックしてみてください。
なぜ退職後は「年末調整できない人」が増えるのか
年末調整と確定申告の役割の違いをおさらい
まずは、そもそも年末調整と確定申告の違いからおさらいしておきましょう。
どちらも「1年間の所得税を正しい金額にするための手続き」ですが、担当する人が違います。 年末調整は、会社員やパートなど給与で働く人のために会社がまとめてやってくれる手続きです。
毎月の給料から天引きしていた所得税を、年末に「本来払うべき税金」と比較し、払い過ぎていれば還付、足りなければ徴収します。
一方、確定申告は、自営業者やフリーランス、または年末調整では調整しきれない人が、自分で1年分の所得と税金を申告する手続きです。
本来は自営業向けのイメージが強いですが、退職・転職などで年末調整がされない給与所得者も、この確定申告のお世話になります。
つまり、「会社が年末調整をしてくれなかった部分」については、自分で確定申告をして調整するしかないということです。
年の途中退職・転職で年末調整ができない仕組み
年末調整は、原則としてその年の最後まで在籍している人が対象です。
途中で退職してしまうと、その会社では年末調整を行わないのが一般的です。 たとえば、
・10月末で退職してその後は無職
・12月上旬で退職して年内は再就職しなかった
というようなパターンでは、どの会社でも年末調整をしてくれない可能性が高くなります。
また、年の途中で転職して、前の会社から源泉徴収票を出してもらっていない場合、転職先の会社が前年分を含めた年末調整をするのが難しくなります。
この結果、「前職分の税金がそのままになっている」「転職先で合算して調整されていない」という状態が生まれます。
こうした穴を埋めるために必要なのが、退職後や転職後に自分で行う確定申告なのです。
「会社がやってくれる」が通用しないパターンを知る
現役で働いているときは、「税金のことは基本的に会社が年末調整でなんとかしてくれる」という感覚になりがちです。
しかし、退職した瞬間からその前提は崩れます。 とくに以下のような人は、「会社がやってくれる」は通用しません。
・年末近くに退職してそのまま年内は無職
・年の途中で複数回転職した
・ダブルワークで2か所以上から給与をもらっていた
このような場合、年末調整では税金を正しく計算しきれないため、自分で確定申告をすることが前提だと考えたほうが安全です。
「うちは中小企業だから、そのへん適当に何とかしてくれてるはず」という思い込みは危険です。
まずは、自分が年末調整の対象になっていたのか、そもそも年末調整がされていないのかを冷静に確認することが、退職後の第一歩になります。
退職後に確定申告が必須になる主なケース
1社だけ勤務だったが年末調整されていないケース
その年に働いた会社が1社だけであっても、年末まで在籍していなければ年末調整がされないのが基本です。
たとえば、次のようなパターンでは自分で確定申告をしたほうが良い可能性が高いです。 ・12月のボーナス前に退職して、そのまま年内は働かなかった
・年内に退職したが、「年末調整は行いません」と説明を受けた
この場合、源泉徴収票に記載されている源泉徴収税額は、あくまで「概算で引かれた税金」のままになっています。
本来であれば、年間の所得額に応じて払い過ぎた税金が戻ってくる可能性があります。
それを放置すると、単純に戻るはずのお金を捨てている状態になるため、確定申告をして精算したほうが圧倒的に有利だといえます。
年末退職の場合、「税金を取り戻すための確定申告」という意識で、積極的に動いたほうが家計にプラスです。
2か所以上から給与をもらっているダブルワークのケース
退職とあわせて注意したいのが、2か所以上から給与をもらっている人です。
たとえば、「平日は会社員、週末はアルバイト」といったダブルワークをしていた場合、年末調整だけでは税金計算が完結しません。 一般的には、メインの勤務先(給与の多いほう)で年末調整を行い、サブの勤務先については源泉徴収票だけが発行される形になります。
このとき、2つの勤務先からの給与を合算した金額で税金を再計算する必要があり、その役割を担うのが確定申告です。
退職をきっかけにダブルワークをやめた場合でも、その年の途中までの給与はしっかり合算する必要があります。
「サブのバイトは少しだけだから大丈夫でしょ」と自己判断で放置すると、本来払うべき税金とズレが出るおそれがあります。
このケースでは、各社からの源泉徴収票を集めて確定申告するのが基本になります。
退職後に医療費・ふるさと納税などがあるケース
退職後、「今年は医療費が多かった」「ふるさと納税をかなりやった」という人も多いはずです。
このような各種控除は、年末調整だけでは反映しきれないものが多く、退職後であればなおさら自分で確定申告する必要があります。 代表的なものは、
・医療費控除(1年間の医療費が一定額を超えた場合)
・セルフメディケーション税制
・ふるさと納税などの寄附金控除
・住宅ローン控除の1年目 などです。
年末退職で年末調整が行われていない場合、これらの控除は自動的には反映されません。
また、ふるさと納税のワンストップ特例を利用していても、途中で転職・退職していると、条件から外れてしまい、確定申告が必要になるケースがあります。
「今年は医療費や寄付が多かったな」と感じる人は、「退職したから関係ない」ではなく、むしろ確定申告をしたほうが得になる可能性が高いと覚えておきましょう。
退職後の確定申告のやり方(準備〜手続き)
退職後のスケジュールと期限を把握する
確定申告には、毎年決まった申告期間があります。
一般的には、翌年の2月中旬から3月中旬までが「その年分の所得税の申告期間」です。 たとえば、2025年に退職した場合、2025年分の確定申告は、2026年の2〜3月に行うことになります。
ただし、払い過ぎた税金の還付だけが目的であれば、申告期間にこだわらず、翌年の1月から5年以内であれば還付申告が可能です。
とはいえ、「どうせ5年あるから」と先延ばしにすると、書類をなくしたり、記憶があいまいになったりして余計に大変になります。
退職後の流れを意識して、源泉徴収票がそろった段階で、その年度の申告タイミングをざっくりイメージしておくと安心です。
カレンダーやスマホに「確定申告の準備を始める日」を入れておき、自分へのリマインダーにしておくのもおすすめです。
退職後の確定申告で必要な書類チェックリスト
退職後に確定申告をする場合、まずは必要書類を漏れなく集めることが大切です。
代表的なものをチェックリスト形式でまとめておきます。
- 勤務先からの源泉徴収票(退職した会社・転職先の会社すべて)
- 健康保険・国民年金・iDeCoなど社会保険料控除証明書
- 生命保険料・地震保険料の控除証明書
- ふるさと納税などの寄附金受領証明書
- 医療費控除を受ける場合の医療費通知書・領収書の集計
- 住宅ローン控除1年目の場合の金融機関からの残高証明書
- マイナンバーカード、または通知カード+本人確認書類
退職した会社に源泉徴収票を依頼していない場合は、まず早めに発行をお願いすることが重要です。
「まだ届いていないからいいや」と放置すると、申告の直前にバタバタしてしまいがちです。
また、控除証明書は多くが年末に郵送で届くので、「届いたらひとまとめにして封筒やファイルに入れておく」習慣をつけると、とても楽になります。
e-Taxと紙申告、どちらを選ぶか
確定申告の方法には、大きく分けてe-Tax(電子申告)と紙での提出の2種類があります。
どちらにもメリット・デメリットがあるので、自分に合った方法を選びましょう。 e-Taxの主なメリットは、
・自宅からインターネットで申告できる
・還付金の振込が比較的早い
・マイナンバーカードがあれば本人確認がスムーズ
などです。
一方で、パソコンやスマホの操作に不慣れな場合は、ログインや事前設定に少し戸惑うかもしれません。
その場合は、税務署で配布されている申告書に手書きで記入し、窓口提出や郵送を選ぶ方法もあります。
初めての確定申告が不安であれば、最初の1回だけ税務署や確定申告会場で職員さんに教えてもらいながら紙で申告し、
2回目以降からe-Taxに切り替える、といったステップもおすすめです。
年末退職・転職組が押さえたい控除・戻ってくるお金
生命保険料控除・地震保険料控除の取りこぼしに注意
毎年、生命保険会社や損害保険会社から届く控除証明書。
在職中なら、会社に提出すれば年末調整で反映してくれますが、年末退職した人はここが大きな落とし穴になります。 年末調整をしてもらえなかった場合、生命保険料や地震保険料の控除は確定申告で自分で申告しない限り、一切反映されません。
その結果、本来よりも多くの所得税・住民税を払ってしまうことになります。
たとえば、年間で10万円以上の生命保険料を払っている人なら、所得控除によって数千円〜1万円以上の税金が軽減されるケースもあります。
控除証明書を「よくわからないから」と放置せず、確定申告のときに必ず入力・記入するようにしましょう。
保険の種類が多くて整理が大変な場合は、保険会社から届く冊子や明細の「所得控除額」の欄を参考にすると、迷いにくくなります。
ふるさと納税・寄附金控除の申告ポイント
ふるさと納税をしている人にとって、退職・転職はワンストップ特例の条件に影響する重要なイベントです。
年内に2回以上転職していたり、途中で退職して再就職していない場合など、ワンストップ特例が使えず確定申告が必要になることがあります。 この場合、自治体から届く寄附金受領証明書をすべて集め、確定申告書の寄附金控除の欄にまとめて入力します。
入力を忘れると、せっかくのふるさと納税が「ただの寄付」になってしまい、自己負担2,000円どころでは済まなくなるので要注意です。
また、退職によりその年の所得自体が大きく減ると、ふるさと納税の上限額(控除される範囲)も小さくなります。
「去年と同じくらい寄付しておけば大丈夫でしょ」と考えていると、上限を超えて自己負担が増える可能性もあるため、
退職・転職が決まりそうな年は、できれば早めにシミュレーションを見直しておくと安心です。
社会保険料・国民年金・iDeCoの控除を忘れずに
退職後は、会社の健康保険や厚生年金から、国民健康保険や国民年金に切り替わる方が多いと思います。
このとき負担する保険料は、確定申告で社会保険料控除として申告できます。 具体的には、
・退職後に自分で支払った国民健康保険料
・国民年金保険料(付加保険料を含む)
・iDeCo(個人型確定拠出年金)の掛金
などが対象になります。
これらを申告することで、所得税・住民税の負担を減らせる可能性があります。
とくに退職後しばらく収入がない時期は、「保険料の支払いが重く感じる」タイミングでもありますが、税金面で少しでも戻りがあるかもしれないと知っておくだけでも気持ちがラクになります。
支払いの控えや、自治体から届く納付書・領収書は、確定申告まで捨てずに保管しておきましょう。
よくある疑問・失敗パターンと対策
「所得税はゼロだけど申告したほうが得」な人もいる
「今年は収入が少なかったから、そもそも税金なんてほとんど払ってないし関係ないでしょ」と思っていませんか。
じつは、所得税がほとんどかからない人でも、確定申告をしたほうが得になるケースがあります。 たとえば、
・パート収入が103万円前後で、源泉徴収税額が少しだけ引かれている
・退職後、短期間だけアルバイトをして、少額の源泉徴収がある
といった場合です。
このようなとき、各種控除(基礎控除や社会保険料控除など)を考慮すると、本来の所得税はゼロ、もしくは今引かれている額よりも少なくなることがあります。
確定申告をすることで、引かれ過ぎていた分の税金が全額戻ってくることも珍しくありません。
「税金を納めるための申告」だけでなく、「払い過ぎた税金を取り戻すための申告」という視点で、一度源泉徴収票をじっくり眺めてみるのがおすすめです。
退職金の税金と分離課税の考え方
退職時に退職金を受け取った場合、その税金の計算は通常の給与とは別枠(分離課税)で行われます。
多くの場合、会社側が「退職所得の源泉徴収票・特別徴収票」を作成し、源泉徴収の段階でほぼ完結していることが多いです。 通常、退職金については退職所得控除があり、勤続年数に応じて大きな控除額が認められています。
そのため、退職金の税金については「自分で確定申告しないといけない」ケースは少なく、給与の確定申告とは切り離して考えてOKなことが多いです。
ただし、退職金の受け取り方が複雑だったり、会社以外から退職金に類するお金をもらっている場合など、例外的に申告が必要になるケースもあります。
心配な場合は、退職金の源泉徴収票を持って、税務署や税理士に相談しておくと安心です。
税務署・相談窓口を上手に活用するコツ
初めての確定申告は、どうしてもわからないことだらけで不安になりがちです。
そんなときは、一人で悩まずに税務署や自治体の相談窓口を活用しましょう。 相談するときのポイントは、
・源泉徴収票や控除証明書をすべて持参する
・「退職した年月日」と「その後の働き方」をメモしておく
・何が知りたいのかを、ざっくりでもいいので事前に紙に書いておく
の3つです。
これだけ準備しておくだけで、相談はかなりスムーズになります。
税務署の職員さんも、決して「怖い人」ではなく、ルールの範囲で最大限有利になるように教えてくれる存在です。
退職後の不安な時期だからこそ、公的な相談窓口を味方につけて、損をしないように制度を使い倒す意識を持っておくと心強いですよ。
まとめ|退職後に「年末調整できない人」こそ確定申告でお金を守る
退職後、とくに年末近くに会社を辞めた人・転職した人は、会社の年末調整に乗れず、自分で確定申告をしないと税金が戻ってこないケースがとても多くなります。
年末調整がされていない源泉徴収票をそのまま放置すると、本来戻るはずだった所得税や住民税を受け取れないままになりかねません。
この記事でお伝えしたように、
・年末調整と確定申告の役割の違いを理解する
・退職・転職・ダブルワーク・ふるさと納税など、自分の状況を整理する
・必要書類をそろえて、e-Taxまたは紙で申告する
という流れを押さえておけば、退職後でもしっかりと自分のお金を守ることができます。
確定申告は、「難しそう」「自分には関係ない」と敬遠されがちですが、じつは一度やってみると想像よりずっとシンプルです。
退職というライフイベントをきっかけに、税金との付き合い方を見直し、制度を上手に活用していきましょう。
もしこの記事を読みながら、「自分のケースはまだよくわからない」と感じたら、源泉徴収票などを手元に用意して、税務署や相談窓口で具体的に聞いてみるのがおすすめです。
退職後の不安な時期だからこそ、確定申告で取り戻せるお金はしっかり取り戻す、その一歩をぜひ踏み出してみてください。

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