「年末調整の紙が配られたけど、正直よく分からない…」
「自分は副業もあるけど、どこまで会社に出せばいいの?」
「年末調整と確定申告って何が違うの?」
こんなモヤモヤを抱えたまま、とりあえず会社に言われるまま書いて出している人は多いです。
ですが、年末調整は「会社が勝手にやってくれる儀式」ではなく、あなたの税金を精算する大事な手続きです。
ここで勘違いや記入ミスがあると、還付されるはずのお金が戻ってこなかったり、逆に税金を多く払ってしまったりすることもあります。
この記事では、年末調整でみんなが迷いやすいポイントを「勘違い」として整理しながら、とくに大事な「提出が必要な人・不要な人の基準」をやさしく解説します。
できるだけ専門用語はかみくだき、会社員・パート・副業ありの方まで、初心者でも読めばスッキリ整理できる内容を目指しました。
読み終わるころには、「自分は何を出せばよくて、どこからが確定申告なのか」が分かるようになりますので、ぜひ最後まで読んでみてください。
年末調整の基本|「何をするもの?」という勘違い
年末調整はボーナスでもおまけでもなく「税金の精算」
年末になると、「年末調整でお金が戻ってきた=ボーナスみたいでうれしい」という会話を耳にします。
ですが、年末調整で戻ってくるお金は、あくまで払いすぎていた税金が精算されて返ってきているだけです。決して国からのプレゼントでも、会社のおまけでもありません。
毎月の給与からは、その年の見込み年収をもとに所得税が天引きされています。ところが、途中で残業が増えたり、逆に収入が減ったり、控除が増えたりすると、「見込み」と「実際」にズレが生じてしまいます。
年末調整とは、そのズレを最後にまとめて調整する手続きです。
こう聞くと少し固い話に感じますが、イメージとしては
「毎月の仮払い」と「実際に払うべき税金」を年末に清算する
そんなレジ締めのようなイメージを持っておくと分かりやすいです。
確定申告との違いを混同してしまう勘違い
年末調整と確定申告の違いも、よく混同されるポイントです。
ざっくり言うと、
年末調整:会社がまとめてやってくれる税金の精算
確定申告:自分で税務署に申告する税金の精算
という役割分担になっています。
給与所得のみで、かつ条件を満たす人は年末調整だけで完結しますが、
副業収入が一定以上ある人や、医療費控除・ふるさと納税のワンストップ特例を使っていない人などは、別途「確定申告」が必要になります。
「年末調整をしたから、自分には確定申告は関係ない」と思い込んでしまうと、還付を受け損ねたり、必要な申告をしないままになってしまうこともあります。
「年末調整」と「確定申告」はどちらか一方ではなく、状況によっては両方必要になるというイメージを持っておきましょう。
年末調整の対象になる人・ならない人のざっくり基準
誰もが年末調整の対象になるわけではないという点も、意外と知られていません。
ざっくりとした目安としては、
会社から給与を受け取っていて、その会社に「主たる給与」をもらっている人
1年を通じてその会社に在籍していた人(途中退職などは別扱い)
といった人が年末調整のメイン対象になります。
一方で、
自営業・フリーランス(個人事業主)
報酬中心で働いているフリーランス型の人
年の途中で退職し、その後どこにも勤めていない人
などは、原則として自分で確定申告をする側になります。
まずは、「自分は会社員として年末調整の対象なのか? それとも確定申告側なのか?」
この位置づけを押さえておくと、この記事全体の理解がスムーズになります。
提出が必要な人・不要な人でよくある勘違い
2か所以上から給与がある場合の勘違い
「副業でアルバイトもしているけど、どこまで年末調整に出せばいい?」
ここは年末調整で最も迷いやすいポイントのひとつです。
基本の考え方は、
メインの会社(主たる給与)で年末調整をする
副業先など2か所目以降の給与は、原則として自分で確定申告
というルールです。
メインの会社には、「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出している会社が該当します。
よくある勘違いは、
「それぞれの会社で年末調整してくれるから、確定申告はいらない」
と考えてしまうケースです。
実際には、複数の会社で年末調整が行われると、税額計算が正しく行われないこともあります。
「主たる給与はどこか」「他の給与はあとで自分で申告する」
この整理をしておくことが大切です。
年途中入社・退職した人の年末調整の勘違い
年の途中で転職した人や、退職した人も、年末調整の対象かどうかでよく迷います。
例えば、
途中で転職して、今の会社で年末調整を受ける場合
→ 前職の源泉徴収票を新しい会社に提出することで、1年分をまとめて年末調整できます。
退職後にその年、再就職していない場合
→ 原則として自分で確定申告を行う必要があります。
ここでの勘違いは、
「退職金をもらったから、もう何もしなくていい」
と考えてしまったり、前職の源泉徴収票をなくしてしまって放置してしまうケースです。
転職した年は、前の会社・今の会社両方の源泉徴収票が必要になる可能性が高いので、書類はしっかり保管しておきましょう。
アルバイト・パート主婦(夫)の「自分は関係ない」勘違い
「私はパートだから年末調整なんて関係ない」「バイトだから会社に任せておけばいい」と思い込んでいる人も多いです。
しかし、一定以上の収入があるパート・アルバイトも年末調整の対象になる場合があります。
ポイントは、
その職場からの給与が「主たる給与」扱いになっているか
給与所得者の扶養控除等申告書を提出しているか
という2点です。
また、「配偶者の扶養に入っているから自分の年末調整は不要」と勘違いする人もいますが、
「扶養」と「自分の年末調整の要不要」は別の話です。
パートでも自分名義で給与をもらっていれば、その収入についての税金は自分側で精算する必要があります。
自分が働いている職場で、年末調整の書類が配られているかどうか、一度確認してみてください。
扶養・配偶者で迷うポイントと典型的な勘違い
「扶養=社会保険」と「税金上の扶養」の違い
「扶養に入っているから、税金も社会保険も全部同じ基準」
こう考えてしまうと、年末調整で混乱しがちです。
実際には、
社会保険上の扶養:健康保険・年金などの基準
税金上の扶養(所得税の扶養控除):年末調整で扱う基準
というように、それぞれ別ルールで動いています。
たとえば、社会保険の扶養では年収の目安が決まっていますが、所得税の扶養控除では「所得ベース」での判定になります。
ここを混同すると、
本当は扶養に入れないのに入れたままにしてしまう
逆に、扶養控除を受けられるのに諦めてしまう
といった損な選択につながることもあります。
「社会保険の扶養の話なのか、税金の扶養の話なのか」
まずは話題の土台を分けて考えるクセをつけておくと混乱しにくくなります。
配偶者控除・配偶者特別控除の勘違い
配偶者控除と配偶者特別控除も、年末調整の鉄板の迷いポイントです。
ざっくり言うと、
配偶者控除:配偶者の収入が少ない場合の控除
配偶者特別控除:配偶者の収入が一定の範囲で増えた場合の控除
という違いがありますが、実務では収入の「壁」がいくつも存在します。
よくある勘違いは、
「〇〇万円を1円でも超えたら、もう何も控除を受けられない」と思い込む
「配偶者がパートで働きすぎたから、もう控除はゼロ」と決めつけてしまう
などです。
実際には、段階的に控除額が変わる仕組みになっているため、
「一気にゼロになる」というケースばかりではありません。
正確な金額はその年の税制を確認する必要がありますが、
「少し超えたからといって、いきなり全ての控除が消えるわけではない」
この感覚だけでも持っておくと、冷静に判断しやすくなります。
子どもや親を扶養に入れるか迷うときの考え方
「大学生の子どもをどこまで扶養に入れられるのか」
「実家の親を扶養にしたほうがいいのか」
こうした悩みも、年末調整シーズンに増えてきます。
ポイントは、
その人の収入・所得がいくらか
どこまで生計を一にしているか(生活費の負担状況など)
といった条件です。
「アルバイトをしているから扶養に入れない」「実家で年金をもらっているから扶養にできない」と思い込む前に、
税金上の扶養の条件を一度確認することが大切です。
判断が難しい場合は、源泉徴収票や年金の通知書を手元に置きながら、会社の担当者や税務署・税理士に相談するのがおすすめです。
一度整理しておくと、翌年以降も迷いが少なくなります。
保険料控除・iDeCoなど控除漏れの勘違い
どの保険が年末調整の対象になるかを勘違いしがち
「とりあえず保険の証券を全部持っていけばいい」
こう考えている人も多いですが、年末調整で扱える保険と扱えない保険があります。
代表的なのは、
生命保険料控除(一般・介護医療・個人年金)
地震保険料控除
などです。
一方で、損害保険のすべてが対象になるわけではないなど、細かな条件があります。
また、親が支払っている保険料を、自分の年末調整で使えるかどうかも、契約者や被保険者の名義によって変わってきます。
「なんとなく対象外だろう」と思って出さないのはもったいない一方で、何でもかんでも出せばいいわけでもないという点は押さえておきましょう。
iDeCo・小規模企業共済などの控除を忘れてしまう
iDeCo(個人型確定拠出年金)や小規模企業共済に加入している人は、掛金が全額所得控除になるという大きなメリットがあります。
ところが、年末調整でこの控除を申告し忘れてしまうケースが少なくありません。
本来であれば、金融機関や共済から届く「控除証明書」を年末調整で提出します。
これを会社に出し忘れると、その年の年末調整には反映されず、自分で確定申告をして控除してもらう必要が出てきます。
年末調整シーズン前後には、郵便物の中に控除証明書が紛れていないかを早めにチェックしておくと安心です。
「後で探そう」ではなく、「届いたらすぐ年末調整用のファイルに入れる」習慣をつけておくと、来年以降も楽になります。
控除証明書がない・間に合わないときの対応の勘違い
「控除証明書をなくしてしまったから、もう今年は諦めるしかない」
そう考えてしまうのは早計です。
多くの場合、保険会社や金融機関に連絡すれば再発行や再送付が可能ですし、ネットでダウンロードできることも増えています。
また、年末調整に間に合わなかったとしても、確定申告で控除してもらうことができます。
大事なのは、「証明書がなければ控除は絶対に受けられない」と思い込まないことです。
もちろん、証明書があるほうがスムーズですが、年末調整でダメでも確定申告でリカバリーできるという選択肢を知っておけば、焦らずに対応できます。
書類の書き方・提出でやりがちなミス
氏名・マイナンバー・押印など「基本事項」のミス
年末調整の書類は、内容以前に「基本事項の書き漏れ」が非常に多いです。
たとえば、
氏名の漢字を間違えて書いてしまう
マイナンバーを書き忘れる・桁を間違える
押印が必要なところに押していない
など、ほんの小さなミスで書き直しになってしまうこともあります。
書類を書くときは、まず「名前・住所・マイナンバー・押印」などの基本情報を最初に埋めてから、細かな金額を書くようにするとミスが減ります。
最後に、1項目ずつ声に出して確認するくらいの気持ちでチェックしておくと安心です。
収入・所得欄の書き方を勘違いしてしまう
年末調整の書類には、「収入」「所得」など似たような言葉が並んでいることがあります。
ここをなんとなくで埋めてしまうと、金額の記入ミスにつながります。
基本的には、会社から配られる案内や見本どおりに記入すれば大きな問題になることは少ないですが、
自分で数字を計算して書く必要がある箇所では、
給与の「支給額」なのか、「手取り」なのか
「収入」ベースなのか、「所得」ベースなのか
を確認しながら書くようにしましょう。
分からない場合は、無理に自分で計算せず、会社の担当者に聞くのがおすすめです。
「よく分からないから空欄のまま出す」のが一番危険なので、疑問はその場で解消しておきましょう。
忙しくて後回し…間に合わないときの考え方
年末調整の書類は、忙しい時期に配られることが多く、つい後回しにしてしまいがちです。
「締め切りギリギリに慌てて書いて、結局ミスだらけ」という経験がある人も少なくないはずです。
理想は、
書類を受け取ったらその日のうちにざっと目を通す
不足している証明書をリストアップする
週末など時間が取れるタイミングで一気に記入する
という小分けステップで進めることです。
どうしても間に合わなかった場合でも、確定申告でのリカバリーという選択肢があります。
大事なのは、「間に合わなかったからもう何もできない」と諦めないことです。
まとめ|勘違いポイントを押さえて「損しない年末調整」に
年末調整は、毎年のように行われるルーティンですが、実は勘違いや思い込みがとても多い手続きです。
年末調整=会社が勝手にやってくれるものと捉えてしまうと、本来受けられるはずの控除を見逃したり、確定申告が必要なのに放置してしまったりするリスクがあります。
この記事で取り上げたように、
年末調整は「税金の精算」であること
提出が必要な人・不要な人のざっくり基準
扶養・配偶者・保険・iDeCoなどで起こりがちな勘違い
書類の書き方・期限を意識した進め方
このあたりを押さえておくだけでも、「なんとなく不安」な状態から一歩抜け出すことができます。
今年の年末調整は、ぜひこの記事を片手に、「自分の状況に合わせて何を出せばいいのか」を整理してみてください。
もし年末調整で出し忘れやミスがあっても、確定申告で取り戻せるチャンスがあります。
焦らず一つ一つ確認しながら、損をしない年末調整を目指していきましょう。

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