モバイルバッテリーの発火事故が相次ぎ、飛行機では以前にも増して持ち込みルールが厳格になっています。
特に、預け入れ手荷物に入れず機内へ持ち込むこと、さらに上部の収納棚に入れず手元で管理することが強く求められています。
国土交通省の要請に基づき、国内の各航空会社が機内アナウンスやウェブサイトで周知を進めており、2025年夏以降は「常に状態が確認できる場所で充電・保管する」点も明確化されました。
とはいえ、「何ワット時(Wh)までOK?」「何個まで持てる?」「mAh表示しかない時は?」「海外線やLCCも同じ?」など、実務の疑問は尽きません。
この記事では、最新の公的情報と大手航空会社の案内をもとに、初心者にもわかる言葉でモバイルバッテリーの機内持ち込みルールを整理。
出発前チェックから機内での置き場所まで、具体的な手順をやさしく解説します。これを読めば、空港で慌てず、安全にフライトを楽しめます。
なぜ「機内持ち込み」が絶対?発火リスクと背景
モバイルバッテリー=リチウム電池の危険性
モバイルバッテリーは高性能なリチウムイオン電池を内蔵しており、衝撃や損傷で「熱暴走」を起こすと発煙・発火に至るおそれがあります。
貨物室へ預けると、異常に気づくのが遅れ、初動対応が難しくなります。だからこそ機内に持ち込み、乗務員や本人が状態を監視できることが世界的な標準です。
IATA(国際航空運送協会)も、パワーバンクは「予備電池」扱いであり、受託手荷物ではなく機内持ち込みに限定する旨を明確にしています。機内なら発熱・異臭などの異常に気づきやすく、客室乗務員が速やかに消火・冷却などの措置に移れます。
最近の注意喚起と「誤解」への対策
近年は世界的にバッテリー関連インシデントの報告が増え、各国当局や航空会社が案内を強化しています。IATAの調査でも、約半数の利用者が小型デバイスを預け入れてよいと誤解し、45%がパワーバンクを預けられると思っていたというデータが示されています。誤解のまま空港へ行くと没収や搭乗遅延の原因になるため、出発前に正しいルールを確認しましょう。
国内でも国土交通省や各社が告知を刷新。2025年7月以降は「収納棚へ入れず手元保管」「常時目視できる場所で充電」といった具体的な運用が案内されています。
「手元に置く」ことの意味
機内で手元に置くメリットは2つ。ひとつは「異常の早期発見」。わずかな発熱・異臭・膨らみなど、初期兆候に本人が気づけます。もうひとつは「初動の速さ」。客室乗務員へすぐ知らせられ、冷却や収納袋の使用など定められた手順に移せます。これらは収納棚(オーバーヘッドビン)では難しいため、座席前ポケットや膝上など、常時目視できる位置が推奨されます。
持ち込み条件:容量(Wh)・個数・保護方法
容量と個数の基本ルール
100Wh以下のモバイルバッテリーは原則として機内持ち込み可。100Wh超~160Wh以下は2個までに制限され、160Wh超は持ち込み・預けともに不可です。これは国内大手各社の案内でも統一されており、空港での判断基準にもなっています。
なお、受託手荷物(預け荷物)に入れることは禁止です。保安検査で発見されると廃棄や搭乗手続きのやり直しが必要になる場合があるため、出発前にバッグの中身を必ず見直しましょう。
端子の絶縁と短絡防止
予備バッテリーは端子の絶縁(テープ貼付)や個別ポーチ収納など、短絡防止の措置が求められます。小さな金属片や鍵束と一緒に入れてショートする事故が多いため、1個ずつ分けて収納するのが鉄則です。
パッケージに戻す・端子カバーを付けるなどの配慮も有効です。機内で充電する際も、ケーブルの曲げ・圧迫、座席可動部への挟み込みには注意しましょう。
スマートバッグ等の注意点
バッテリー内蔵のスマートバッグは、電池を取り外せない構造だと預けも持ち込みも不可となる場合があります。電池が取り外せれば本体は預け可、取り外した電池は短絡防止をして機内持ち込みが基本、というのが各社の運用です。出発前に必ず仕様を確認し、取り外し工具を同梱しておくと安心です。
機内アナウンスの意図:上部棚NG・手元に
収納棚に入れない=対応を速くするため
最近の機内アナウンスで繰り返されるのが「座席上の収納棚にモバイルバッテリーを入れないでください」というお願いです。収納棚は閉じてしまうと温度上昇や煙に気づきにくく、取り出しにも時間がかかります。だからこそ手元で保管し、異変のサインを見逃さない運用に変わっています。
充電は“常に状態が見える場所”で
機内でのスマホ充電や、座席の電源→モバイルバッテリー充電も、常に状態が確認できる場所で行うのが新ルール。膝上やテーブル上、座席前ポケットなどに置き、発熱・膨張・異臭などがあればすぐ充電を止めて乗務員へ知らせます。これも2025年に明確化された要請事項です。
もし異常を感じたら
本体が熱い、焦げ臭い、膨らんでいる、液漏れ、煙などは即時対応のサイン。充電を中止し、無理に触れたり押さえつけたりせず、客室乗務員に通報してください。座席の隙間に落として見失った場合も、座席を動かす前に乗務員へ。可動部で圧壊・発火する事故を防げます。
準備チェックリスト:出発前〜搭乗中
出発前:Wh確認・個数・劣化チェック
まずはラベルのWh表示を確認。見当たらない場合は「Wh=mAh÷1000×電圧(V)」で算出できます。一般的な3.7Vなら、27,000mAh≈99.9Whといった目安です。100Wh超は2個まで、160Wh超は不可の上限を超えないよう整理しましょう。膨張・ひび・端子の汚れなど劣化サインがあれば使用を中止し、持ち込み自体を避けるのが安全です。
空港で:検査通過のコツと放棄リスク
受託手荷物に入れないことは大前提。保安検査では取り出しやすい場所にまとめ、予備電池は個別ポーチで短絡防止を。Wh不明や基準超過だと輸送不可となり、現地で放棄せざるを得ないケースもあります。空港でのトラブルを避けるため、事前の表示確認と個数管理が最重要です。
機内で:置き場所・充電マナー・落下時
収納棚(オーバーヘッドビン)はNG。膝上・テーブル上・前ポケットなど、視界に入る位置で管理します。充電は布に埋もれないよう通気を確保し、就寝中の充電は避けるのが無難です。座席の隙間へ落としたときは動かす前に乗務員へ連絡を。可動部での圧損・ショートを防げます。
よくある質問:mAh計算・海外航空会社・家族分
mAhしか書いてない…どう計算する?
mAh表記しかない場合は、Wh=(mAh÷1000)×電圧(V)で計算します。例:10,000mAh・3.7Vなら約37Wh。この数値が100Wh以下なら多くの航空会社で持ち込み可、100~160Whなら最大2個までが一般的な基準です。迷ったら航空会社ページの「容量計算式」を確認しましょう。
海外キャリアや乗り継ぎ便も同じ?
基本方針は共通ですが、各国当局・各社の細則に差があります。国土交通省の案内にも「外国航空会社に搭乗する場合は各社の指示に従う」と明記されています。乗り継ぎや他社運航(コードシェア)の場合は、搭乗全区間で最も厳しい基準に合わせて準備しましょう。
家族で複数台は何台まで?
個数上限は「1人あたり」のルールが適用されます。例えば100~160Wh帯のものは2個までが一般的。子ども分も含め人数で按分できますが、容量の合計や保管・監視に無理がない範囲にしてください。損傷・非PSE品・改造品は持ち込み自体を避け、各社ページで最新情報を再確認するのが安全です。
実践ポイント:安全に持ち運ぶためのコツ
安全な製品を選ぶ(購入時)
購入時はPSE適合や信頼ブランド、過充電保護などの安全機構をチェックしましょう。容量は旅の用途に応じて、100Wh以下に収まるモデルが扱いやすく、複数持つなら小容量を複数が実用的です。IATAも品質不良の電池はリスクが高いと注意喚起しています。
収納・持ち運びの基本(移動時)
機内では手元での保管が前提。金属類と同じポケットに入れない、圧迫しない、直射日光や高温を避けるなど、電池に優しい扱いを徹底します。予備は個別ポーチに分け、端子を保護。ケーブル抜き差しの際はコネクタを持って丁寧に操作しましょう。
フライト中のチェック(運用時)
充電中は目を離さない、異常があれば中止、収納棚に入れない。この3点がコア原則です。スマホ充電は便利ですが、睡眠中の長時間充電は避け、機器を布や衣類で覆わないこと。異常時はすぐ客室乗務員へ。各社のお願い・運用は2025年にさらに具体化しています。
トラブル予防のミニFAQ(超要約)
Q. 預け入れに入れたらダメ?
ダメです。受託手荷物は発見・初動が遅れるため、航空安全上の理由で預け入れ禁止。必ず機内持ち込みにしましょう。
Q. どこに置けばいい?
収納棚はNG。手元・前ポケット・テーブル上など、常に状態確認できる場所に。充電中も同様です。
Q. mAh→Whがわからない…
Wh=(mAh÷1000)×V。多くのモバイルバッテリーは3.7V想定で、10,000mAhなら約37Wh。100Whがひとつの区切りです。
まとめ
モバイルバッテリーの飛行機持ち込みは、預け入れ不可・機内持ち込み・手元で監視の三本柱が基本です。容量は100Wh以下なら原則可、100~160Whは2個まで、160Wh超は不可。さらに2025年以降は「収納棚に入れず」「常時目視できる場所で充電・保管」が明確化されました。短絡防止やmAh→Whの事前計算も忘れずに。国土交通省や各社の最新ページを確認し、正しいルールを守って安全・快適な空の旅を。
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